コロナ禍でエリアビジネスが一変
理由の2つ目は、会計事務所がネット検索により選ばれる場合は、地域も基本的に関係なくなるということです。従来は多くの士業はエリアビジネス、すなわち一定地域内の顧客を対象とする地域密着型ビジネスでした。
ある町で起業した経営者が税理士に顧問を依頼する場合、以前から知り合いだったなどの特別な事情がなければ、他県の税理士や弁護士に依頼することは通常ありません。会社があるのと同一か、あるいは近隣の市区町村にある事務所を選びます。これは、対面での相談に乗ってもらえることが士業選びの1つのポイントだったからです。
しかし、クラウドシステムの登場やITの進歩、さらにはコロナ禍がその状況を一変させました。ほかの多くの産業と同様、会計事務所においてもリモートでの業務提供が増え、関与先のほうもそれを当然のこととして受け入れるように意識が変わったためです。
月次の経理データは会社の経理担当者がクラウド経由で入力するか、あるいは会社のパソコンに保存したデータをメールで送付するなどしてやり取りすることが増えました。帳簿や証票類も、デジタル化してオンラインでやり取りされます。
その動きをさらに推進するように、2022年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、帳簿類はデジタルデータとして保存されることが義務づけられました(2023年12月末まで猶予措置)。
また、商談などがオンラインでなされることが増えたように、月次監査もビデオチャットなどで実施される場合が増えています。データのやり取りも月次監査もオンラインで済むなら、会計事務所を近隣地域から選ぶ必要は薄れます。
唯一、税務調査が実施される際には訪問してもらうことが必要ですが、これは数年に1度のことであり、事前に予定がわかるものですから、そのときだけは出張して来てもらえばいいだけです。
すると、ネット検索で会計事務所が探索される際は全国にある事務所から、価格やサービスが適正な事務所が選ばれるようになります。北海道や九州の会社が、東京の有名な大規模事務所に依頼するということが当たり前になってきているのです。
地方の会計事務所から見れば、従来は無関係だった都会の大規模事務所が、突然、顧客を奪い合うリアルなライバルになったということです。これも、従来の職人型事務所の生き残りを難しくしています。
上夷 聡史
(株)日本M&Aセンター執行役員 コンサルタント戦略営業部 統括部長
行政書士
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