高付加価値化という難問
会計事務所の収益性の低下に対して目指すべき改革として「高付加価値化」ということが古くからいわれています。高付加価値化自体は、いまや経営に携わる誰もが取り組んでいることではありますが、そのための取り組みで華々しい成果を上げている事務所は多くはありません。
会計事務所全般としては顧問報酬が低下しており、むしろ「低付加価値化」が進んでいるといえます。しかし、データにおいても5万円超の高価格帯の顧問報酬にわずかながら増加が見られるように、なかには高付加価値化に成功している事務所もあるのです。
「高付加価値化を目指す」というのは簡単ですが、それを実現することは簡単ではありません。そもそも一時期取り組んでいたものの効果が得られずに諦めてしまったという事務所も少なくないはずです。その背景として、高付加価値化を成し遂げようとしてもそれを担う人材がいない、所長もどう指示をすればいいのかわからないということがまずあります。
人材については、もともと余裕のある体制で回している事務所は少数で、ただでさえぎりぎりの人数で回しているところに、所長からただ高付加価値化に取り組めといわれたところで、職員にそんな余裕があるわけもありません。そのうえ、所長が、なににどう手をつけていいのかを具体的に指示できなければ、絵に描いた餅です。
また、会計事務所において顧問契約は通常、なにか特別なきっかけがなければそのまま維持されていきます。
ある程度の関与先をすでに獲得している会計事務所では、業務の刷新をしなくても現状維持、あるいは緩やかな減少程度で存続していくことは十分可能です。今すぐ高付加価値化を成功させなければ事務所がつぶれるとなれば取り組みを急がざるを得ませんが、そうでなければ強いモチベーションがわかなくても無理はありません。
そして、関与先が毎年1社増えて2社なくなる、といった感じで少しずつ減っていき、近い将来のいつかは非常に厳しい状況に陥るかもしれないけれども、今はまだ特別なことはしないということが常態化してしまうのです。
そのような会計事務所はやはりある程度余裕のあるうちに高付加価値化に本気で取り組むべきであり、それが事務所の存続につながります。
上夷 聡史
(株)日本M&Aセンター執行役員 コンサルタント戦略営業部 統括部長
行政書士
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