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これまでの親子関係が最期に影響する
また、老後の幸せを手に入れられるか、幸せな最期を迎えられるかは、これまでの親子関係や家族とのつながりに大きく左右されることもあります。
私のクリニックの患者さんにある資産家の女性がいました。デパートで買い物をするときには何人もお付きの担当者が同行するような人でした。
90歳を迎えたとき、彼女は長年の夢であった茶室付きの立派な家を建てたのです。彼女はここを「終の棲家」にするのだとうれしそうに教えてくれました。ところが、家が完成した直後に夫が病気で急逝し、なんと彼女自身も脳梗塞を発症してしまいます。後遺症が重く、そのまま入院となり、意思疎通をはかることも難しい状態になってしまいました。
彼女には一人息子がいましたが、親子間でトラブルがあり、長い間連絡を取っておらず、事実上の絶縁状態にありました。しかし、彼女が倒れたことをきっかけに、息子が久しぶりに彼女のところにやってきたのです。話し合いの末、新居での介護は難しいと判断され、施設へ入居することが決まりました。私は、資産家の彼女のことなので、おそらく都内にある高級老人ホームに入居することになるのだろうと思っていたのですが、実際に入居したのは、息子が選んだ安い介護付き有料老人ホームでした。その後、彼女はその施設で亡くなられたそうです。
安い老人ホームだからといって、必ずしも悪い施設とはいえません。しかし、彼女のこれまでの裕福な暮らしぶりや、夢見て建てた茶室付きの家とはかけ離れた環境であることを思うと、彼女にとってはどこかもの悲しい最期だったように感じざるを得ません。
資産があっても必ずしも、望んだ最期を迎えられるわけではないのです。息子にしてみれば親の資産をできるだけ減らさず、相続したかったのかもしれません。これまでの親子関係が、最期の選択にも大きな影響を与えたのだと思います。
また、彼女自身も「終の棲家」として家を建てるのか、自分で選べるうちに自分にふさわしい施設を探して入居するのか検討したり、万が一の場合の選択肢や資産の使い道について意思表示をしておいたりしても良かったのかもしれません。
中野義澄
中野内科クリニック 医学博士
脳神経内科専門医
認知症サポート医
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