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介護が必要になってから老後の幸せを考え始めたのではもはや手遅れ
「こんなはずじゃなかった」
仕事をリタイア、シニアライフを満喫するはずだった人のつぶやきを、私は幾度となく耳にしてきました。
定年後の老後をどう過ごすか。これは、人生100年時代を生きる私たちにとって避けては通れないテーマです。もし、65歳でリタイアしたとすれば、その後に続くのは35年間、一生の約3分の1に相当します。どうすればこの長い期間を幸せに、そして充実したものにできるのでしょうか。
私は現在81歳、現役の医師として55年にわたって、たくさんの高齢者を診療してきました。また、介護付き有料老人ホームの運営に携わるなかで、数え切れないほどの高齢者の生活を見守ってきました。その中で痛感しているのは、老後の準備を先延ばしにした結果、病気を患ったり、介護が必要になったりしてしまい後悔する人がいかに多いかということです。健康や自由を失ってはじめて、「もっと早くから老後の幸せを考えて健康管理をしておけばよかった」と悔やむのですが、残念ながらもはや手遅れなのです。
例えば、「リタイアしたら妻と一緒に世界中を旅するんだ」と夢見ていた人は、いざその時を迎えたときには、足腰が衰えてしまい思うような旅ができなくなっていました。また、ある人は「学生時代に楽しんだ山登りに再度挑戦しよう」と思い、念のために受けた健康診断で不整脈が見つかってドクターストップがかかってしまいました。心筋梗塞や脳血管障害になって、後遺症に苦しんだり、寝たきりになったりして、長い老後の期間を介護なしでは生活できなくなってしまう人もいます。
医師として、病気の人や介護が必要な人と接するなかで、「もっと早くから老後のことを考えて予防や対策をしていれば、こんな状況になるのは防げたのに」と思うことは多々あります。老後の幸せを手に入れることは、寝たきりや介護が必要になる前に考えて実行できるかにかかっているのです。
定年後の喪失感から老後うつ・認知症に陥るケースは多い
健康でありさえすれば、老後の幸せが保証されるかというと、もちろんそんなことはありません。定年後に生きがいや、やりがいを失ってしまうことで不幸になる人も多く見てきました。
私のクリニックに50代の頃から通院していた男性は、有名大学を卒業後、有名企業に勤め、支店長などの役職を務めていました。出張で海外もよく飛び回っていたそうです。
60代半ばでその会社を定年退職してからも、子会社の幹部として相変わらず活躍していたそうです。ところが、70歳でその会社を退職してから、急に人が変わってしまったのです。
診察に訪れた際、「最近、どう過ごされていますか?」と聞くと、「何もすることがなくて」と暗い表情で答えました。活気にあふれていた彼が、仕事を辞めたことで生きがいを失ってしまったのです。「家族や友人と遠出してみては?」と勧めても、「まあ、そうですね……」と力のない返事をするばかりです。結局、その後の彼の診察の頻度は減ってしまい、最終的に受診されなくなりました。あとで人づてに聞いたところ、認知症になって施設に入居されたとのことでした。
これまで仕事で活躍してきた人ほど、リタイア後に「自分の役割がなくなった」「社会から必要とされなくなった」という喪失感にさいなまれる傾向があります。この男性も定年後に少しでも社会とのつながりを維持できていれば、こんなふうにならなかったのではと、私に何かアドバイスできることはなかったのかと悔やまれてなりません。
