父親の相続
香織さん(52歳)が相談に来られました。父親の相続手続きに関してのご相談です。
父親は胆のう炎を患い、病院に入院して半年後に亡くなってしまいました。
父親は会社を経営しており、80歳になるまでずっと仕事をしており、休んだこともないほど元気でした。
しかし、検査で病気が見つかり、入院すると一挙に体調が悪化して、家に帰りたいという希望はかないませんでした。
入院期間があったおかげで、父親も覚悟ができたようで、会社は兄が引き継ぎ、大きな問題はありませんでしたが、遺言書は作らないまま、亡くなってしまいました。
相続人は4人
両親はふたり暮らしをしていましたが、敷地の半分に父親の節税対策として賃貸マンションを建て、その1室に兄家族が住んでいますので、何かといえばすぐにサポートができる環境でした。
相続人は、母親と父親の会社を継いだ兄、他県に嫁いだ姉と相談者の香織さんの4人です。
父親には遺言書がありませんので、4人で遺産分割協議書を作らないといけません。ところが、父親が亡くなってから半年ほどして、そろそろ相続の手続きをしなくてはいけないという頃から、ひとり暮らしになった母親に認知症状が出始めたのです。
母親も亡くなった
父親の相続手続きをしないといけないというときになって、母親は自宅でのひとり暮らしが不安になり、慌ただしく介護施設を探して、入所することになりました。
仕事が忙しい兄や離れたところに住む姉は母親の面倒は見られないため、近くに住む香織さんが毎日のように母親の家に行き、家事のサポートをしてきました。介護施設の入所にあたっても香織さんがあちこちをあたって探し、入所のときも手伝ってきました。
やれやれと思った2ヶ月後、母親は肺炎で急に亡くなってしまったのです。父親が亡くなってから8ヶ月後で、まだ、遺産分割協議もできていませんでした。
こうした状況で相続の手続きはどうすればいいかと香織さんが相談に来られました。
相続は別々に手続き
本来なら、父親の遺産はまず母親が相続する予定でした。配偶者には特別な優遇制度があり、遺産の半分まで、または1億6,000万円までなら相続税がかからない仕組みになっているからです。
ところが、遺産分割協議をする前に母親が亡くなってしまったため、すぐに二次相続の申告も必要になります。遺産分割協議にて母親が財産を半分相続するという相続の仕方を選択できますが、二次相続での相続税を考慮すると、母親を飛ばして子供たちだけで相続をしたほうが相続税の負担が少ないこともあります。
父親のときの相続税と母親のときの相続税の両方を考慮したところで、兄、姉、香織さんの3人で相続の仕方を選択することになりました。
母親にも預金や父親との共有の不動産があるため、香織さんごきょうだいの場合は、母親には父親の相続分を渡さずに3人で相続したほうが負担が少ないことが分かりました。
ご両親か相次いで亡くなってしまったことで香織さんごきょうだいは混乱したということですが、幸い、きょうだいの仲は悪くないため、相続税や登録免許税などの負担が少ないほうを選択して手続きを進めていかれるようにアドバイスをしました。
相続実務士のアドバイス
できる対策:
・父親の相続の仕方で、二次相続の相続税の負担が変わるため、比較が必要。
・二次相続の負担を減らすため母親に財産を寄せない選択肢もある。
注意ポイント:
・母親にも財産がある場合、父親の財産を相続してしまうと二次相続の相続税が増えることになる。
・母親の節税対策ができない場合は、母親に寄せずに子どもが相続する方が節税になるため、比較して選択する。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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