(※写真はイメージです/PIXTA)

元従業員による顧客の引き抜きは、売上の低下など、会社経営にとって大きなダメージになります。ほかの従業員のモラル低下を防ぐためにも、会社として断固たる姿勢で対応することが重要です。そこで今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、元スタッフによる顧客の引き抜きへの損害賠償請求について、細井大輔弁護士が解説します。

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売上激減…顧客の引き抜き疑惑

相談者は、ネイルサロンを経営しています。先日スタッフの一人から退職の申し出があり、後日退職する予定になっていました。ある日、相談者はサロンの売上が一気に減り、明らかに顧客が少なくなっていることに気づきます。

 

顧客の洗い出しをしたところ、何年も継続していた数名のお客様が予約をキャンセルし、その後の予約が入っていないことが原因だとわかりました。そしてそのお客様は後日退職する予定のスタッフの担当だったのです。

 

ほかのスタッフからは「『ホームサロンを開く予定なんだよね』とそのスタッフがいっていた」と聞き、顧客を引き抜かれたことは濃厚だと考えています。なお相談者は、入社時と退職時に競業阻止義務、損害賠償の誓約書のサインをもらっています。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

(1)どのような手順で損害賠償を請求すればよいか。また損害賠償の金額はどのように計算するのか。

(2)損害賠償請求以外に、サロン側が取れる法的措置はあるのか。

(3)競業阻止義務の内容によっては、その合意が無効になることもあるのか。

退職後の従業員の「競業避止義務」とは?

退職後の従業員に競業避止義務を課すことは、原則として当然に認められるものではありません。労働契約は基本的に自由意思に基づくものであり、従業員は退職後、自由に職業選択をする権利(憲法22条)が保障されています。そのため、退職後に競業を制限するには、特別な根拠と合理性が求められます。

 

まず、入社時や退社時に取り交わした競業避止義務や損害賠償に関する誓約書の内容を確認することが必要です。さらに就業規則の規定や、サロン全体の運用実態もあわせて検討することになります。

 

退職後の競業避止義務が有効と認められるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます(裁判例の傾向に基づく)。

 

・制限される地域の範囲が合理的か
・制限される期間が社会通念上相当か
・競業禁止が必要とされる会社側の利益(営業秘密の保護など)が存在するか
・退職者に対する代償措置(退職後の補償金支払等)があるか

 

これらの要素を満たしていない場合、たとえ誓約書にサインしていても、競業避止義務は無効と判断される可能性があります。

 

したがって、まずは締結された誓約書の文言と、その背景事情(顧客リストや営業情報の管理状況、代償措置の有無)を精査し、有効な競業避止義務が存在するといえるかを検討することが第一歩となります。

 

次に、仮に有効であったとしても、問題となっている元スタッフの行為(たとえば特定顧客への働きかけや、サロンの営業秘密の使用)が誓約違反に該当するかを、具体的に立証できるかを確認する必要があります。これにより、警告書送付や損害賠償請求といった次の対応を判断していくことが適切です。

 

 

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