(※写真はイメージです/PIXTA)

後期高齢者医療制度を構成するのは病気になるリスクの高い75歳以上の高齢者です。保険としては還元率が低いにもかかわらず、後期高齢者分として保険が切り分けられたことには、財政界の思惑が関わっているのではないかと医学博士の原口兼明氏は指摘します。本記事では、医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長である原口氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より部を抜粋・再編集し、後期高齢者医療制度が導入されたあとの財政状況の変化について詳しく解説します。

後期高齢者医療制度は医療費抑制に効果があったのか

※2002年度までの老人医療費は、老人保健制度対象者に係るもの。  2003年度以降は70歳以上の国民医療費。 【出典】けんぽれん「医療保険制度の現状」
【図表3】国民医療費の推移 ※2002年度までの老人医療費は、老人保健制度対象者に係るもの。
 2003年度以降は70歳以上の国民医療費。
【出典】けんぽれん「医療保険制度の現状」

 

【図表3】は、後期高齢者医療制度が導入された2008年前後の、国民医療費の推移を表したグラフです。これを見ると、国民医療費全体に対する後期高齢者医療費の割合は2008年で32.8%と前年比マイナスになっています。しかし2009年以降は、金額ベースでも、全体に占める割合でも前年比プラスがずっと続いています。

 

「この制度を導入したからこそ、この程度の伸びで抑えられているのだ」ともいえますが、例えば2016年は国民医療費全体は前年比マイナスになっているのに、後期高齢者医療費は逆に増えていて、抑制効果が十分に働いているとはいえません。

 

一方、この新制度導入によって、明らかにプラスの効果が出ていることもあります。それが、組合健保の財政状況です。

 

【出典】大和総研「健保組合に求められる保健事業の強化」
【図表4】健保組合の財産保有状況 【出典】大和総研「健保組合に求められる保健事業の強化」

 

【図表4】は、大手企業の被用者保険組合である組合健保の財産保有状況の推移を表したグラフです。これを見ると、後期高齢者医療制度がスタートした2008年から数年間は積立金の額を減らしていますが、2014年度以降はプラスに転じ、2018年度までで、すでに2008年時点での金額を超えています。

 

先ほどの国民医療費・後期高齢者医療費のグラフと比較してもらえばよく分かりますが、国民医療費も後期高齢者医療費も年々増加しており、例えば国民健康保険などは財政面で相当厳しくなっていると予想されるのに、組合健保は逆に財産を増やしています。

 

そうだとすれば、後期高齢者医療制度の導入は、少なくとも組合健保、大企業、経済界にとっては流動資産拡大につながっているので、「大いにプラス効果があった」と評価できます。これだけの財源があるなら、高齢者医療費の補塡にもう少し回してくれてもよいのではと思います。

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

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