(※写真はイメージです/PIXTA)

政府によって発表された高齢社会対策大綱にも「高齢者の医療費負担率引上」が含まれ、高齢者医療費の公費負担について再考するタイミングが近づいています。少子高齢化社会が進行してきた日本では高齢者医療費にまつわる制度はどのように変化してきたのでしょう。本記事では原口兼明氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋し、後期高齢者医療制度が導入されるまでの過程について詳しく解説します。

「病院のサロン化」と「社会的入院」

70歳以上は何度受診しても無料のため、いつしか病院の待合室が井戸端会議の場になってしまい、病院の待合室で「あれ、今日は山本さんの顔が見えないね」「どこか体の具合が悪いんじゃないの?」という会話が交わされたというジョークがマスメディアで繰り返し流れたりもしました。

 

また「何日入院してもタダ」という病院のベッドが、当時まだ十分に整備されていなかった高齢者用介護施設代わりに使われるという「社会的入院」も横行しました。

 

本来、1963年に施行された老人福祉法は、家族が介護するのが難しい高齢者を社会全体で支えていこうという法律であり、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、老人介護支援センター、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センターの設置についてもすでに明記されていました。

 

ところが、こうした高齢者介護施設の整備はなぜかあまり進まず、代わりに無料になった高齢者医療がクローズアップされてしまったため、いびつな形で老人医療費だけが膨らんでしまったと考えられます。

 

ともあれ、老人医療費無料化にどこかで歯止めをかけなければ、わが国の高齢者福祉行政が立ちゆかなくなるのは明らかでした。そこで政府は、老人福祉法と老人医療費支給制度による現状を軌道修正するため、新たな法律を成立させます。それが1982年制定の老人保健法でした。

老人保健制度の導入

この老人保健法の規定により、1983年2月1日から新たにスタートしたのが老人保健制度です。対象となるのは、無料化されたのと同じ70歳以上の高齢者で、対象者はそれぞれ以前からの医療保険(被用者保険か国民健康保険)に加入しながら、制度の運営者である市町村から医療費、薬剤費、入院時の食事費、老人保健施設療養費などの給付を受けることになります。

 

その際の財源は、先の老人医療費無料時に国民健康保険ばかり負担が重くなったことを教訓とし、各保険者(組合健保、協会けんぽ、国民健康保険)からの拠出金と公費で賄うことにしました。拠出金には、高齢者自身が納めている保険料と高齢者以外の若年層が納めている保険料の両方が含まれます。また、拠出金と公費の割合は7:3で、公費の割合は国:都道府県:市町村が4:1:1になります。

 

ちなみに、この新しい制度下における高齢者の窓口負担は定額制で、外来1日400円、入院1日300円でした。本来であれば、ほかの世代と同様、定率制にしたかったはずですが、その前日まで70歳以上の高齢者は窓口負担がずっと無料だったので、いきなり1割負担を導入するわけにはいかなかったようです。

 

この老人保健制度はその後4度改正され、2001年改正で高齢者の自己負担は定率制の1割負担になり、2002年改正では自己負担1割、現役並み所得者2割になり、2006年10月からは自己負担1割、現役並み所得者3割に変更されたところで、2008年4月からの後期高齢者医療制度の導入を迎えるわけです。

 

 

原口 兼明

医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長

医学博士

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

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