(※写真はイメージです/PIXTA)

政府によって発表された高齢社会対策大綱にも「高齢者の医療費負担率引上」が含まれ、高齢者医療費の公費負担について再考するタイミングが近づいています。少子高齢化社会が進行してきた日本では高齢者医療費にまつわる制度はどのように変化してきたのでしょう。本記事では原口兼明氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋し、後期高齢者医療制度が導入されるまでの過程について詳しく解説します。

最大の失敗「老人医療費無料化」の影響

しかし、実はそれが悪いほうへ働いてしまいました。老人福祉法の改正により、老人医療費支給制度が創設され、わが国の社会保障政策最大の失敗といわれる「老人医療費無料化」が1973年から始まってしまったのです。

 

時代の流れで革新系の首長が全国の自治体に次々に生まれ、社会福祉事業の一環として高齢者医療費を無料化する動きが広がり、それが国民に喝采をもって迎えられたため、政権を維持したい政府がその人気に乗っかる形で制度化したのでした。しかしその結果、医療機関を受診する高齢者が爆発的に増えてしまいます。

 

厚生労働省による「推計患者数の年次推移」を見ると、老人医療費の無料化で70歳以上の受診者がいかに増加したかがよく分かります【図表1】

 

【図表1】推計患者数の年次推移
【図表1】推計患者数の年次推移 厚生労働省「推計患者数の年次推移」を基に作成

 

1970年と1975年で患者数を年齢別で比較してみると、0~14歳の外来患者数は148万8200人から160万6900人へと1.08倍の増加、入院患者数は5万4400人から6万5800人へと1.21倍に増加でした。15~34歳では、外来患者数は0.84倍へと減少し、入院患者数も0.82倍とこちらも減少。35~64歳は外来患者が1.07倍、入院患者が1.01倍とこちらは微増でした。

 

ところが、70歳以上の外来患者数は2.2倍に増え、入院患者数も2.1倍に増えています。これは明らかに、医療費無料化の影響です。

 

サラリーマンが定年退職すると、通常は勤務先企業の被用者保険(組合健保や協会けんぽ)から脱退して国民健康保険に加入します。そのため、国民健康保険の高齢者加入率はほかの医療保険の2倍以上と突出しています。それだけに、老人医療費の無料化は、国民健康保険の財政状況に大きな影響を与えました。高齢者(老人)の窓口負担がゼロになったとしても、保険者が医療機関に支払う診療報酬はゼロにはならないからです。

 

そして、高齢者が医療機関を受診すればするほど、国民健康保険の負担は大きくなっていき、一時は国民健康保険の財政が破綻するのではとの懸念も強まりました。今、あの時代を振り返ってみると、老人医療費無料化で最も問題視されたのは「病院の老人クラブ化(サロン化)」と「社会的入院」でした。

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

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