(※写真はイメージです/PIXTA)

医師が診療した際に発生する報酬(診療報酬)は、右肩下がりに抑制されつづけています。なかでも、薬価が占める割合が引き下げられたことにより、海外新薬が輸入されにくい状況にあります。このように抑制された診療報酬は日本医療全体の質・量の損失を招いている、と指摘するのは、医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長の原口兼明医学博士です。本記事では原口氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集し、詳しく解説します。

右肩上がり消費者物価指数とは裏腹に診療報酬はマイナス成長

今日の医薬品不足の元凶を探るために、ここまでは診療報酬の薬価部分に注目してきました。診療報酬全体としても、過去四半世紀にわたって改定率プラス1%未満に抑えられ続けてきたことは、わが国の医療にさらに深刻なダメージを与えています。

 

診療報酬は2年ごとに改定されるのですが、過去14回の改定率の推移を見ると、前回よりプラス改定だったのは2000年、2010年、2014年の3回だけ。改定率が最も高かった2000年改定でさえ、プラス0.2%でした。

 

一方、残り10回はマイナス改定で、1998年のマイナス1.3%、2002年のマイナス2.7%、2006年のマイナス3.16%など、下げ幅のほうが断然大きいことが分かります。

 

【出典】明治安田生命「ライフフィールドマガジン」
【【図表1】】約30年間の日本の消費者物価指数(総合指数)の推移 【出典】明治安田生命「ライフフィールドマガジン」

 

【図表1】は、過去30年の消費者物価指数の推移を表したグラフです。この間、日本経済はずっとデフレ基調だったので、物価上昇率もそれほど高くありませんが、全体として右肩上がりであることはグラフからも見て取れます。特に2021年の後半からは、新型コロナやロシアのウクライナ侵攻の影響で国際的な原材料価格が上昇し、さらに円安圧力も加わって明らかに物価高の局面に入っています。

 

ところが、診療報酬は2022年度マイナス0.94%、2024年度マイナス0.12%と、いまだにマイナス成長が続いているのです。この改定には明らかに、「医療費は何がなんでも抑制する」という、国や財務省の強い意志が感じられます。

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

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