相続した土地を「建物付き」で売却するか、それとも「更地」にして売却するか…実際に土地の売却を検討したことがある方なら一度は悩んだことがあるはずです。「解体するのは手間がかかる」「費用がかさむのは避けたい」といった理由から、建物付きで売却を考える方も多い一方で、更地にしたほうが買い手が見つかりやすく、結果的に高値で早く売却できる可能性もあります。また、相続した空き家の場合には、更地にして売却することで「相続空き家の3,000万円特別控除」という大きな節税メリットを活用できることも。本記事では、「建物付き」と「更地」のそれぞれの特徴と、それに伴うメリット・デメリットを相続専門税理士の岸田康雄氏が解説します。

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「建物付き」と「更地」の違いを正しく理解する

まず、「建物付き」と「更地」では、土地の状態がまったく異なります。

 

建物付きとは、築年数が経過した住宅などがそのまま残っている状態の土地です。なかには資産価値がほとんど残っていないような老朽化した建物が建っているケースもあります。このような状態では、建物の存在がむしろマイナス要因となることもあります。

 

一方、更地とは、建物が完全に取り壊され、空き地の状態になっている土地を指します。この状態の土地は、買主が自分の好きなタイミングで建物を建てたり、駐車場や倉庫など別の用途に活用したりすることができるため、購入後の自由度が高くなります。

 

この違いによって、売却価格はもちろん、売れるまでのスピード、固定資産税などの税金、解体費用などのコスト、さらには売却時のトラブルのリスクまで変わってくるのです。

建物付きで売ることのメリット

建物付きで売却する一番のメリットは、解体費用がかからないという点です。

 

たとえば木造住宅を解体する場合、一般的に1坪あたり約5万円前後の費用がかかります。仮に20坪の住宅を解体するとなると、およそ100万円程度の費用が必要になります。こうした出費を避けたい方にとって、建物付きのまま売却する選択肢は大きなメリットとなります。

 

また、最近は古民家をリノベーションして住むというライフスタイルも人気になってきています。築年数が古くても、建物の状態が比較的良好であれば、そのまま「家付きの土地」として販売し、リノベーション目的の買主にアピールすることも可能です。

 

さらに、住宅が建っている土地には、固定資産税や都市計画税の軽減措置があります。具体的には、住宅用地であれば、固定資産税が更地の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減される制度です。この優遇は大きく、毎年の税負担に直接影響してきます。

 

また、建物が存在していれば、買主が住宅ローンを利用しやすくなるという利点もあります。土地単体ではローンの対象外になる場合もあるため、建物付きのほうが資金調達の面で有利になることもあります。特に資金計画に余裕のない買主にとっては、建物付きで購入できるということが大きな判断材料になります。

「契約不適合責任」というリスク

建物付きの土地を売る際には、「契約不適合責任」というリスクが発生する可能性があります。これは、売却後に建物や土地に不具合や問題が発覚した場合、売主が一定の責任を負わなければならないというものです。

 

たとえば、地中に古い排水管や廃材が埋まっていた場合や、雨漏りや基礎の劣化が原因で買主から損害賠償を求められるケースなどが挙げられます。これらのトラブルを未然に防ぐためには、事前に建物や土地の調査を行い、必要に応じて情報開示を徹底することが大切です。

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