更地で売ることのメリット
更地にして売却する場合、最も大きな利点は、売れやすさにあります。土地を探している購入希望者の多くは、新築を目的として土地を探しているため、既存の建物があるよりも、更地のほうがはるかに需要が高いのです。
買主は購入後すぐに自分のプランに合わせた建物を建てられるため、タイムロスも少なく済みます。また、老朽化した建物が残っていないため、見た目もスッキリしており、第一印象が良くなる点も見逃せません。
さらに、更地にすれば、建物の維持管理にかかる手間や費用を省くことができます。空き家は定期的な換気や清掃、草木の管理、防犯対策が必要であり、長期間放置していると、近隣トラブルや行政からの指導が入ることもあります。
相続空き家の節税制度を活用する
更地にして売却する場合の大きな節税メリットが、「相続空き家の3000万円特別控除」という制度です。これは、一定の条件を満たした相続空き家を更地にして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
主な条件は以下になります。
・昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
・被相続人が亡くなるまでその家に住んでいたこと
・相続後も空き家のままであること
・売却価格が1億円以下であること
・売却先が親族や同族会社でないこと
・売却が相続開始から3年以内に完了していること
さらに、土地と建物の両方を相続していることが前提であり、相続人の人数によって控除額も変わります。この制度を活用すれば、数百万円単位での節税が可能となるため、相続した空き家を持っている方は必ず検討したい選択肢です。
後悔のない選択をするには
ここまで、「建物付き」と「更地」のそれぞれの売却方法について見てきましたが、どちらが正解かは一概には言えません。
建物付きで売れば、解体費用を抑えられるというメリットがありますが、買い手が限られたり、契約不適合責任のリスクを伴うというデメリットもあります。一方で、更地にすれば、売れやすくなるうえに、相続空き家であれば特別控除による節税のチャンスもありますが、解体費用がかかるという負担も発生します。
つまり、どちらが良いかは、「土地の状態」「相続の有無」「売却を急ぐかどうか」「税金対策の優先度」といったさまざまな要因によって異なるのです。
土地の売却は、大きなお金が動く重要な決断です。事前にメリットとデメリットをしっかり把握し、必要に応じて不動産業者や税理士など専門家のアドバイスを受けながら、後悔のない選択をしてください。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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