残された子どもたちの「遺産分割協議」…ちゃんとした「遺言書」があればスムーズだが…「きょうだい間」の「争続」の末路【相続専門税理士が解説】

残された子どもたちの「遺産分割協議」…ちゃんとした「遺言書」があればスムーズだが…「きょうだい間」の「争続」の末路【相続専門税理士が解説】

父親や母親が亡くなり、子どもたちである「相続人」がまずすべきことは、財産を見つけ出すことです。ですが、突然、被相続人が亡くなった場合、財産がどこにあるのかをきちんと把握することは容易なことではありません。また財産は「遺産分割協議」という全員の話し合いで決定しなければなりません。事前の準備がなければ、話し合いがまとまらないことも想定されます。相続専門税理士の岸田康雄氏が、子どもたちの遺産分割について解説します。

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遺産分割協議に失敗すると「家庭裁判所」を頼ることに…

相続発生後の手続きを行うにあたり、最初にやるべきは、遺産となる相続財産をすべて見つけ出して確認することです。

 

しかし、相続の対象となるのは「いまある財産だけではない」という点には注意が必要です。相続発生前に贈与された財産や引き出された預貯金についても、しっかりと把握する必要があるのです。

 

よくあるのが、亡くなる前にお世話をしていた家族が、医療費を払うために、親御さんのキャッシュカードを使って預貯金を引き出していた、といったケースです。遺産相続時点できちんと整理・把握しておきたいところです。

 

ひと通り遺産の確認が終わると、今度は遺産分割です。遺産分割は「遺産分割協議」という、相続人全員の話し合いで決めます。ただ、この遺産分割協議というのが大変で、意見が合わない相続人や、話し合いへの参加をしない相続人が出ると、協議がまとまりません。もし遺産分割協議に合意できないと、相続財産は相続人全員の共有状態となってしまい、処分が難しくなります。

 

このような困った事態を回避する場合、相続人が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。もしこの調停に現れない相続人がいると、遺産分割審判に発展し、裁判官が遺産分割を決めることになります。

「遺言書」があればそれに従えばいい

以上が相続の大まかな流れですが、遺産を「きょうだいで遺産分割する」という場合、2つのパターンがあります。

 

ひとつは、亡くなった人に複数の子ども、つまりきょうだいがいるパターン。もうひとつは、亡くなった人に子どもがなく、その人のきょうだいが相続人となるパターンです。「きょうだいで遺産分割」という表現は同じですが、状況は大きく違うといえます。

 

とはいえ、遺産分割協議の流れはどちらも同じです。遺言書があればそれに従い、ない場合は相続人全員で話し合いを行うことになります。

「遺産分割」ができなくても一度、相続税を支払う必要あり…

相続税申告は、被相続人が死亡したことを知った翌日から10ヵ月が期限です。それまでに遺産分割が終わらなかったとしても、申告や納税は待ってもらえません。

 

遺産分割ができていなければ、法定相続の割合で分割したものと仮定して相続税を申告し、納税することになります。

 

きょうだいの遺産分割は、後々の遺産分割協議がまとまったときに財産をもらえることになった人だけでなく、財産をもらえなかった人も相続税を納付する必要があります。さらに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった、相続税を減額できる特例が使えないので、遺産分割が完了している場合と比較して、相続税額が大きくなる可能性が高くなります。

 

しかし、事前に「申告期限後3年以内の分割見込書」に適用したい特例を書いて提出しておくことで、遺産分割の完了後に特例を使うことができます。

 

もし、裁判中などで3年過ぎても遺産分割ができないといった場合は「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出すれば、判決が確定するまで待ってもらうことができます。

 

遺産分割がまとまったあとで改めて相続税を計算したところ、先に納税しておいた金額と異なっていた場合は、修正申告を行います。もちろん、あらかじめ納税していた額を上回る場合には追加で納付することになりますが、多めに支払っていればきちんと戻ってきます。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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