「こげなもん売れるとかね」「戦時中芋ばっかり食べたけん、もう見たくなか」 爆売れした“干し芋”…作り手の75歳超ばあちゃんたちの本音

「こげなもん売れるとかね」「戦時中芋ばっかり食べたけん、もう見たくなか」 爆売れした“干し芋”…作り手の75歳超ばあちゃんたちの本音
(※画像はイメージです/PIXTA)

福岡県うきは市。人口の約半分が高齢者のこの地で、75歳以上の「ばあちゃん」たちが、最低賃金に近い時給で働き、次々とヒット商品を生み出しているという異例の事態。本稿では、大熊充氏の著書『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』(小学館)より、ブツブツと本音を漏らしながらも、驚くべき知恵と粘り強さで不可能を可能にするばあちゃんたちの奮闘と、その裏にある過疎化が進む山村の現実をみていきます。

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なぜ「干し芋」が爆売れしたのか?

 

『蜜な干し芋』はうきはの宝を代表する大ヒット商品です。とにかく、そんじょそこらの干し芋とは比べものにならないくらい甘い!

 

世代を超えて人気の干し芋を、ばあちゃんのオリジナルレシピで作ったこの自信作は、2023年11月にクラウドファンディングの『Makuake(マクアケ)』で発表。半径1キロ圏内で応援してくれる人を集められたらいいかな、と思っていたら、発表してすぐ目標金額の200,000円をクリア。期間内に160万円の応援金が集まり、その後も通販などで売れ続け、約10ヵ月後には1,000万円近く売り上げました。

 

出所:
【画像】『蜜な干し芋』はうきはの宝の大ヒット商品。 出所:『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』(小学館)より引用

 

購入者の感想を読むと、刺さったキーワードは「ばあちゃんが作った」、でした。やっぱり、ばあちゃんたちが大事なんです。

 

とはいえ、完成するまではもう大変! 開発会議の時、ばあちゃんたちからは「戦時中とか芋ばっかり食べたけん、もう見たくなか」とか「昔の芋は甘くなかった」とか、やる気のない本音が出てきました。試作も超難航。干し芋を作って持ち寄ったり、会社で芋を焼いたりふかしたり……。「煙たいばっかりやん」とか「手間がかかる割にはおいしくない」とか、不満の嵐です。

 

全国の有名な干し芋を買って研究もしたけど、ん〜、どれもいまひとつピンとこない。ばあちゃんたちがおいしいと思うレシピを根気強く探るしかありません。

 

そもそも芋って、品種はもちろん、気温やその時の状態で味が全然違うんです。それを商品化するには、味を標準化しないといけない。職人技が必要でした。

 

大量に仕入れて熟成させた芋を腐らせたり、蒸す時の温度が悪くて甘みや柔らかさが出なかったりと、失敗も数知れず。外気や機械で少しずつ温度を変えながら乾燥させる適温を探ったり、マルシェのお客さんに感想を聞いたり。思うように進まないレシピ作りに、ぜんぶ放り投げたくなる日もありました。

 

でも、どうしてもあきらめきれなかった。来る日も来る日も、ばあちゃんたちと干し芋を作っては食べ、作っては食べ……。このチャレンジを3年間繰り返しました。だから、レシピが決まった時は、自分たちでも驚きました。びっくりするほどしっとりとしていて、めちゃくちゃ甘い! これだ、と確信しました。

 

通販で大ヒットして福岡県知事賞も獲得。世間の評価的にも「他とは比べ物にならないほどウマイ!」というところまでいけたんです。

 

ずっと関わってくれたばあちゃんたちは、疲れたことでしょう。「大熊くんにうまいこと乗せられた」と思ってるかもしれない。最初は「こげなもん売れるとかね」って自信なさげだったし。

 

でも、商品が世に出たら大反響で、県知事賞までもらって、表彰式にも出席して、お祝いのご飯も食べて。みんなみんな、喜んでくれました。「やったかいがあったね!」って。うきはの宝みんなで獲った、県知事賞です。

 

 

大熊 充
うきはの宝株式会社
代表取締役

 

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※本連載は、大熊充氏の著書『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』(小学館)より一部を抜粋・再編集したものです。

年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス

年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス

大熊 充

小学館

「ばあちゃんビジネス」で高齢化問題を解決 高齢化が加速度的に進行する福岡県うきは市。 「うきはの宝」は2019年、地域のおばあちゃんたちに「収入」と「生きがい」を提供することを目的に、大熊充氏が設立した。 従…

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