(※写真はイメージです/PIXTA)

トランプ政権が繰り出す様々な政策で、翻弄されっぱなしの金融市場。投資家たちも神経をすり減らしています。こんな局面をうまく乗り切る方法はあるのでしょうか? ※本連載は、長谷川建一氏の著書『富裕層のためのオルタナティブ投資の教科書』(ゴールドオンライン新書)より一部を抜粋・編集したものです。

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ヘッジファンドをうまく活用するには

どのファンドマネージャーにも必ず運用の癖があります。たとえば、ある局面においてはアルファ(特定のリスク資産に対する投資家の期待収益率と均衡収益率の差)を取りやすかったり、別の局面においてはリターンが出にくくなったり等、各々の傾向が見受けられます。

 

投資の原則としてしばしば「卵は一つのカゴに盛るな」(複数の金融商品に投資することでリスク分散を図るの意)といわれますが、ヘッジファンドの世界に限っても同じことがいえます。一つの戦略のみではなく、さまざまな戦略に分散投資をしてリスクを抑えてこそ、安定的なリターンが目指せるのです。

 

投資家のなかには、変動率の高いものだけを見て「ハイリスクを取ってハイリターンを狙うのがヘッジファンド」と考える人もいます。さかのぼると、もともと「いかなる局面でも利益を出すことができる絶対収益型ファンド」という文脈で語られてきました。名前のとおり、リスクを避け(ヘッジ)安定的なリターンが狙える戦略を提供するのがヘッジファンドの意義なのです。

 

近年は、インデックス株投資(日経平均株価等、市場全体の動きを示す指標と連動した投資成果を目指す投資法)のみ行っていればよいという風潮があります。確かに、コスト面を考えると高いパフォーマンスが期待できます。一方で、株式・債券はいずれ下落します。

 

そのため、時間を分散させて投資をする、ドルコスト平均法を用いるのが個人投資家の間では王道です。下落したときに少しでも買い足せば、取得平均価格を減らすことができ、中・長期的に見たときにリターンがプラスになる確率が高くなるからです。

 

一方で、ヘッジファンドを活用すれば、株式と同程度のリターンを獲得しつつ、変動率を抑えることで、一喜一憂しないという投資が可能です。さらに、株式投資以上の高いリターンを狙いたいという場合にも、複数のヘッジファンドに投資することで超過的な収益を狙うことがきでます。

「ETF(上場投資信託)」と「スマートベータ」

加えて、近年は「低い運用コストで特定の市場リスクを取りたい」という希望に応える、ETFやスマートベータといった金融商品が流通しています。こうした商品を活用することで、個人の投資家も自分の持つ市場ビューを低コストで実現できる時代が到来しました。

 

ETFは上場投資信託と呼ばれており、日経平均株価やS&P500等の特定指数と連動するように運用されます。パッシブ型投資信託と類似した仕様を持つ金融商品です。

 

スマートベータは、「配当利回りに期待する銘柄のみに投資して、バリュー重視の運用がしたい」「変動率の低い投資がしたい」といった投資家の希望に応える商品です。たとえば、今後もし「バリュー優位、グロース劣後」といった局面が訪れたとしても、ポートフォリオを組み直す必要はありません。そのため、追加で高い報酬を支払う必要もなく、低コストで自分の見通しに沿った運用ができます。

ヘッジファンドの今後

このように、現在はリテール(個人や中小企業を対象とした金融商品の小売りや小口の業務)向けの金融商品のなかでも、個人投資家の意向に沿った低コスト商品が充実しています。そんななか、高額な運用コストを支払ってでもヘッジファンドに投資する価値が果たしてあるのでしょうか。

 

答えとして、筆者は「ヘッジファンドに投資する価値はこの先も変わらない」と考えます。もちろん、管理費用や報酬費用に対する下方圧力は続くと想定されます。それでも、ヘッジファンドが提供する追加的な収益は、効率的なポートフォリオの構築を可能にしてくれます。

 

一方で、金融商品の多様化が進むなか、今までのような買いのみで指数以上のリターンを狙うような投資信託は、厳しい局面を迎えるでしょう。株式指数は2009年以降、堅調に推移しています。そんななか、大きなリスクを取らずに個人投資家向けに商品を売る場合、ファンドの管理コストが過大となります。コスト控除後に指数をアウトパフォームするというのは至難の業です。

 

また、前述のとおりETFやスマートベータといった個人投資家のニーズに沿った金融商品が台頭しています。たとえば「あるセクターのエクスポージャーだけを持ちたい」「バリューのファクターのみを抽出した株式のエクスポージャーを持ちたい」といった細やかなニーズを低コストで叶えられる時代が到来しました。このような状況のなか、管理コストのかかる投資信託にもかかわらず指数を下回るパフォーマンスとなると、資金集めに苦労することになります。

 

投資信託のファンドマネージャーの場合、顧客は個人投資家がメインです。そのため、金融規制の面から大きくリスクを取る運用ができません。そんななかコストがかさみ、結果として市場の平均以下になってしまうというケースが散見されます。したがって、個人が株式投資をする場合には管理費用が安く、市場平均を狙うパッシブ運用が好まれています。特に近年は、ネット証券がコストの透明化、商品の比較性、手数料無料等の観点から優れており、従来の窓口での購入から急速に流れています。

 

また、信託コストは低下の一途をたどっています。現在においても、年配者のなかには窓口での購入を好む人が少なくありません。ですが、ネットを駆使している大きな層は、より効率的な投資に流れています。低コストのパッシブ運用はまさに時流とマッチしているのです。パッシブの投資信託やETFにシフトする流れは今後ますます加速するでしょう。そうなったときに、一般ではあまり見かけない尖った商品、なおかつ高いフィーを払ってでも、それに見合ったリターンを見込めるヘッジファンド、そういったものが引き続き魅力的な投資先になる公算は大きいです。

 

 

長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者
国際金融ストラテジスト <在香港>
京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

※本連載は、長谷川建一氏の著書『富裕層のためのオルタナティブ投資の教科書』(ゴールドオンライン新書)より一部を抜粋・編集したものです。

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