経営理念は判断基準
経営理念は判断をしなければならないことで迷いが生じた場合の指針になるもので、全社員で共有しなければなりません。そのため新入社員教育のなかにも理念教育があります。
専用の資料が用意されており、経営理念をつくった私が1時間半から2時間ほどかけて説明しています。資料は全12ページですが、説明に時間をかけるところがいくつかあります。
特に行動指針に強く反映されている私の自己分析は、なぜこういう結果になったのかを時間をかけて詳しく説明するところです。経営理念に対する印象もその場で聞きます。自分の考えと一致しているところと異なるところはどこか、ということについてはほぼ必ず聞くようにしています。
社員に聞いてみると、自分と同じ考えですという反応が思っていたより多く、考えてもみたことがないといった反応は少数です。求職者は自分の考えや信条に合うような会社を探しているせいか、入社を決めてくれた人は経営理念で掲げたことを理解してくれています。経営理念を理解できなかったり賛同できなかったりする人は私の会社で働くべきではありません。
経営理念のなかには「常に明るい笑顔と挨拶をする」といった、社員が変わったと実感しやすい行動指針もあれば「自身が発する感情に責任をもつ」のように、変化が表に見えにくい項目もあります。
行動を強制する内容ではないため、分かりやすい変化だけを見れば、経営理念は社員にしっかりと浸透していると判断できます。
個性を大切にする経営理念
私がつくった経営理念は、社員の行動を強制したり、特定の方向に無理やり変えようとしたりするものではありません。浸透と聞くと社員を一つのカラーに染め上げ、性格や行動まで変えるようなイメージをもつかもしれませんが、私はむしろ個人の個性を大切にしたいと考えています。
経営理念とは、争いごとが起きたときにそれを解決するための判断の基準として存在するものです。理念に頼らなければならない場面以外では、無理に意識する必要はありません。
そのため、経営理念が浸透しているかどうかを強く気にしたことはありません。それよりも重要なのは、経営理念という絶対的な存在が会社にしっかりと根付いていることです。言い換えれば、経営理念は会社にとっての精神的な支柱であり、社員が迷ったときに立ち返るための基盤としての役割を果たしています。
現場の状況を最もよく知る社員に決断を任せることで、私自身が判断する必要のないことはすべて社員に任せる方針を取りました。