社長の在宅ワークがもたらす変化
私のリモートワークにより社員たちは徐々に現場で判断することの重要性を理解し、そのための情報を集め、分析し、チームとして動くようになりました。私も、必要なときにはオンラインミーティングやチャットを通じてアドバイスを行う一方、細かい指示を控えることで、社員の自主性を育てることを意識しました。
社員が社長の指示や判断を求めてきても、私は基本的に社員の判断に任せることにしています。現場に裁量権を与えており、現場のことは現場で決めていいことにしているのです。現場のことは彼らがいちばんよく分かっているので、私よりも的確な判断が下せるはずです。
経営理念の浸透
しかし、社員に判断を任すにしても、判断するための材料が必要です。そのため私の会社では基本的に情報を可能な限りオープンにしており、全社で共有できるシステムを構築しています。
また、判断基準の根底にもなる経営理念の浸透にも力を入れています。情報の共有は拠点が複数箇所あり社員が分散していることから推進したものですが、ほとんどの情報に社員がアクセスできるので意思決定に活用することもできるというわけです。
社員がどのような決断を下しても、明らかに経営が傾くような決断ではない限り、私は再考を促したりするようなことはしません。思っていたことと多少異なることであっても、基本的には受け入れるようにしています。受け入れず否定してしまうと、社員は結局、社長の意思がすべてと思ってしまい、自ら意思決定をして行動に移すことをしなくなるからです。
社員たちが自分で考え、自ら決断できるようになると、組織全体の雰囲気が変わり始めました。会社は私の在宅フルリモートによって、徐々に自走組織へと生まれ変わっていったのです。
私はこの経験を通じて、社長業ほどリモートワークが向いているものはないことを実感しました。リモートワークは物理的に社員から距離を取ることで、彼らが自ら動く必要性を生み出し、自主性を育む環境をつくり出します。多くの人は、社長が常にオフィスにいて現場を監督することが必要だと考えると思います。
しかし、逆に社長が一歩引くことで、社員が主体的に動き、組織全体が活性化するのです。結果として、リモートワークを通じて社員が自信をもって判断し、行動する文化が生まれました。社内の意識改革につながったのです。
社員たちは最初こそ不安を抱えていましたが、今では自分たちの判断力に自信をもち、私に依存せずに動く力を身につけています。