(※画像はイメージです/PIXTA)

企業の経営理念を社員1人1人が理解し、日々の業務にまで浸透するには、分かりやすく、抽象的でなく、多様な解釈を許さないものであることが大切です。本記事では、コロナ禍前に社長の完全フルリモートを採用するなど、大胆な改革をしてきた経営者・平井康介氏の著書『僕がフルリモートで会社を経営する理由』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集し、熟考の末にたどり着いた経営理念を作った過程に迫ります。

経営理念をつくる難しさ

社長業のリモートワークを進め、社員が自ら考え判断する組織づくりを始めるにあたって、私が最初に取り組んだのは、経営理念をつくることでした。社員が各自で判断をするには、判断基準となる土台が必要です。社員がどのような状況でも自分で考え、迷うことなく行動できるようになるためには、全員が同じ方向を向き、共通の基準をもつことが欠かせません。

 

そこで私は、社員一人ひとりが一貫した判断をできるようにするための「よりどころ」として、経営理念を共有することが重要だと考えたのです。この経営理念は、社員だけではなく、経営者である私自身にとっても重要な指針であり、常にそれに基づいて行動することが求められます。

 

そして、社長に就任してから約1年半後の2017年1月、私は経営理念を制定しました。

 

経営理念とは、会社のトップに立つ者の理念です。経営者は、自分が信じるものや絶対的な土台・柱といった理念を基にして判断していくのが本来の姿になります。社内をまとめるためには、社員にもこの理念どおりに動いてもらうことが大切です。

 

私は経営理念をつくった経験がなく、どのようにしてつくるのかも知りませんでした。2016年10月頃から本格的に経営理念づくりに取り掛かり、まずは経営理念のつくり方について書かれた本を片っ端から読み始めました。

 

しかし、どの本を読んでも内容にはまったく共感できませんでした。なかには「儒教を基に考えましょう」というものもありました。儒教でいわれていることを現代の言葉に置き換えて経営理念にするというものですが、抽象的で実務に即した具体性が感じられず、私の会社の現状にどう役立てればよいのかが見えてきませんでした。他社の経営理念も参考にしましたが、それが意味することをまったく理解することができませんでした。

 

それをいわれても「じゃあどうすればいいの?」という感覚になるものばかりだったのです。どういう行動を取ればいいのか、どういうふうに考えればいいのかが伝わってきません。

経営理念とは何か

「理念」という言葉の辞書的な意味は「根底にある考え方」です。したがって、経営理念は社長が決める会社での根本的な考え方であり、社長が当たり前だと思うことです。だからといって行動を縛っていいものではありません。他社の経営理念を見て思ったことが、本心で言っているとは思えないものがあることです。

 

具体的には「社員とその家族の幸せを考えます」といったことを経営理念に掲げているところがありますが、これは私から見たらできないことです。

 

会社は社員の幸せは考えます。しかし、社員の家族の幸せまでは考えられないと思っています。それは社員の家族のことは知らないからです。知らない人の幸せまでは考えられるはずもありません。社員の家族の幸せは社員が考えるものです。

 

無理なこと、できないことを経営理念に掲げるのは嘘をつくことと同じです。よく考えてみると、仮に社員の家族が病気になったとしたら、会社はその人のために何ができて、何をすべきかなどの疑問がわきます。社員の家族の幸せを考えるということは、そういうときに直接的な支援をすることですが、それは現実的ではありません。

 

意味を考えなければならないのが経営理念だとしたら、そんなものはつくりません。経営理念は社員に理解してもらわないとならないものです。まずはつくる人が理解できるものである必要があります。

 

しかし、つくる人が理解できないもの、社員のとらえ方によって見解がばらついてしまうような経営理念は、私はつくる必要はないと思っています。

 

次ページ熟考の末にたどり着いた独自の経営理念とは

※本連載は、平井康介氏の著書『僕がフルリモートで会社を経営する理由』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

僕がフルリモートで会社を経営する理由

僕がフルリモートで会社を経営する理由

平井 康介

幻冬舎メディアコンサルティング

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