(※写真はイメージです/PIXTA)

米国の大手資産運用会社であるアライアンス・バーンスタインによると、「取締役会の年齢層」と「株価パフォーマンス」には相関関係があるそうです。その根拠と「取締役会の年齢」が投資家に与える影響について、詳しくみていきましょう。アライアンス・バーンスタイン株式会社の責任投資ヘッドである臼井はるな氏が解説します。

年齢層が幅広い企業のほうが、年率リターンが高い

具体的には、ラッセル1000指数の構成企業を取締役の年齢層に従って3つのグループに分類し、2017~2023年の株価パフォーマンスを分析しました図表3)。

 

※ 3つのグループは以下のとおりです。

1.最年長の取締役と最年少の取締役との年齢差が30歳を超える取締役会

2.最年長の取締役と最年少の取締役との年齢差が21~30歳までの取締役会

3.最年長の取締役と最年少の取締役との年齢差が21歳未満の取締役会

 

出所:ブルームバーグ、FTSEラッセル、IDC、AB
[図表3]取締役会の年齢ダイバーシティが大きいほど、過去のリターンが高い(米国) 出所:ブルームバーグ、FTSEラッセル、IDC、AB

 

その結果、1.の取締役の年齢差がもっとも大きいグループの企業がもっとも高い年率リターンを創出した一方で、3.の年齢差がもっとも小さいグループの企業が創出したリターンはもっとも低いことがわかりました。

 

この傾向はほとんどのセクターで一貫して見受けられ、イノベーション志向のセクターではより顕著です。創業者が主導する企業とそれ以外の差を調整しても、傾向は同様でした。

 

取締役会の年齢ダイバーシティは、テクノロジーやヘルスケアなどのR&D集約型のセクターでもっとも価値が高く、素材や不動産などのあまりR&D集約型ではないセクターではもっとも価値が低いようです。

 

もちろん若さがいつも経験に勝るというわけではありません。取締役の選出においては、その資質がもっとも重要なことに変わりはないと当社は考えています。

 

とはいえ、複数世代で構成される取締役会が過去数年間にわたり、単一の世代で構成される取締役会よりも高い投資パフォーマンスを上げる傾向があったことは、見逃せない事実です。

 

取締役会の「年齢層」が、優良株を選ぶ“決め手”のひとつに

取締役会の年齢ダイバーシティがもたらすメリットが明らかになりつつある一方で、この課題に対応する規制やガバナンス・コードはまだ見当たりません。

 

こうした状況はいずれ変化する可能性が高く、当社としては、企業が取締役会を刷新していくなかでどのように年齢ダイバーシティを考慮しているかを見極めるとともに、こうした考慮がプラス(もしくはマイナス)に作用するセクターをより明らかにしていきたいと考えています。

 

投資を行う際に検討すべきファクターは数多くあり、取締役会の構成はその1つにすぎません。しかし、取締役会の年齢ダイバーシティが業績指標やリターンの向上と相関関係にあることが明らかになっている以上、投資家は、投資先企業の取締役会の年齢ダイバーシティを注意深く分析すべきでしょう。

 

日本においても、年齢をはじめ異なる視点から取締役が選出されることで、経営への適切な監督機能が発揮されることを期待しています。

 

 

臼井 はるな

アライアンス・バーンスタイン株式会社

責任投資ヘッド

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください。

 

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【ご注意】※本稿は、アライアンス・バーンスタイン株式会社(AB)のリサーチブログ「知の広場」の「取締役会も年齢を気にしよう」を参考に、再編集したものです。詳細については当該ブログをご覧ください。

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン・ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2024年10月16日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が再編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

〈参照〉
※1 SRNレポート「New Kids on the Block: The Effect of Generation X Directors on Corporate Performance」(https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3540512#:~:text=Generation%20X%20directors%20are%20slowly%20replacing%20Baby%20Boomers%20on)

※2 Sage Journals「Age diversity and the monitoring role of corporate boards: Evidence from banks」
(https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/00187267221108729)

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