インバウンド市場の規模は2015年、3兆4771億円に
近年、日本を訪れる外国人旅行者は増加の一途をたどっており、外国人旅行者による日本国内での消費活動すなわち「インバウンド市場」の重要性も高まっています。
観光庁によると、2011年には日本を訪れた外国人は622万人でしたが、その4年後の2015年には3倍以上の1974万人にまで膨れ上がりました。特に2012年以降は円安やアジア諸国の経済発展などの追い風が吹いて、訪日外国人旅行者数のグラフは急激な右肩上がりとなっています。
【図表1 訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移】
増えているのは人数だけではありません。訪日外国人旅行者の1人あたり買い物支出額も大きく伸びています。観光庁の「訪日外国人の消費動向」によると、2011年における訪日外国人の1人あたり支出額は11万3917円でしたが、2015年には、17万6168円にまで増えています。2015年には、「爆買い」が流行語大賞を受賞するほどの社会現象にまでなりました。
その結果、訪日外国人旅行消費額(=インバウンド市場の規模)は拡大を続けています。
2011年に8135億円だったインバウンド市場の規模は、2015年には3兆4771億円に達しました。たった4年で約4.3倍もの急成長を遂げたわけです。現在の日本でこれほど爆発的な成長を見せた市場は、ほかに見つかりません。
【図表2 訪日外国人旅行消費額】
きっかけは官民で開始した「グローバル観光戦略」
このように訪日外国人旅行者が増えるきっかけとなったのが、国土交通省が中心となって2003年にスタートした「ビジット・ジャパン・キャンペーン」です。
当時、訪日外国人旅行者数はわずか約520万人でした。従来の観光行政は、日本人の国内・海外旅行の振興を図ることが目的であり、外国人旅行者の受け入れ者数を世界各国と比較すると、日本は欧米諸国のみならず中国、タイ、インドネシア、韓国にも劣る35位。外国人旅行者の受け入れを外貨獲得という観点から考えれば、国際収支は約3.5兆円もの赤字だったのです。
その不均衡を是正するため、2002年に国土交通省が「グローバル観光戦略」を立案し、官民が協力するかたちでこのキャンペーンを開始、2010年までに年間で1000万人の外国人が訪日することを目標としたのです。
このキャンペーンでは、観光客の招致活動を重点的に行う「重点市場」を定めています。2003年のスタート当初の重点市場は韓国、台湾、中国、アメリカ、香港という5つの国・地域でしたが、次第に追加されて2015年には20の国・地域に向けて取り組みを拡大しています。
具体的には海外の一般消費者や旅行会社に向けたPR活動、国内における外国人向け案内の充実、観光資源の掘り起こしや外国人向け旅行商品の企画などが並行して進められています。当初政府は、「2020年までに訪日外国人旅行者2000万人」という目標を立てていましたが、2015年には1974万人が日本を訪問。前倒しで目標達成できそうな状況です。