炊飯器の爆買い…ピークは2014年秋から2015年春
日本の観光収入は、炊飯器の爆買いに代表されるような日本製品を購入しにやってくる外国人旅行者をターゲットとした「モノ」頼みビジネスで伸びてきました。しかし、この「モノ」消費には限界があります。
これまで「爆買い」の代表選手といえば、医薬品以外にも炊飯器が有名でした。しかしこの売り上げのピークもすでに去ったと考えられているのです。実際に象印マホービンの市川社長も、朝日新聞デジタルのインタビューで「炊飯器の爆買いピークは2014年秋から2015年春だった」と述べています。
1960年代、高度経済成長期の日本では人々がこぞってマイカーやテレビ、冷蔵庫を購入しました。しかしそれらの製品が行きわたり、1970年代に日本が安定成長期を迎えると、需要は一段落しています。それと同じ現象が、中国で起こっていると考えられているのです。
顕著に減少している外国人旅行者の買い物代
2016年に発表された日本銀行の訪日外国人動向によると、2016年1~3月に関西空港から入国した外国人のうち、中国人が使ったお金は1人あたり約14万4千円。1年前に比べると約3万円減っているのです。
しかも、購入される商品にも大きな変化が表れています。中国からの旅行者の購入品を見ると、時計やカメラなどの高額商品の購入割合が2年前の38%から24%に低下した一方で、化粧品や医薬品などの日用品の割合は25%から45%に増えています。つまり、家電や高級品といった高額商品から、日用品などの低額商品へと変わり、購入単価が大きく下がっているのです。
【図表1 訪日外国人動向(日本銀行大阪支店調査)】
(1)関空入国者1人当たりの買い物目的の支出金額
(2)中国からの関空入国者の購入品目
実際に、2016年のみずほ総合研究所の調査によると、中国をはじめとする外国人旅行者の買い物代が顕著に減少していることがわかっています。中国およびNIEs(新興工業経済地域、台湾・香港・韓国など)旅行者の1人あたり買い物代を見ると、2015年中盤に大きく上昇したものの、2016年に急激に低下しています。これも1人あたりの購入単価の低下、もしくは日本での買い物そのものが大幅に減少していることの裏付けにほかなりません。
日本のインバウンドビジネスは、これまで順調に成長してきました。しかし、これまでのような「モノ消費」に頼っていると、拡大の余地はもはやありません。一部のメディアではこれまでも、「モノ消費から脱却せよ」「爆買いは終わる」と言及してきましたが、いよいよそれが、現実のものとなってきているのです。
【図表2 費目別の一人当たり支出】
【図表3 主要訪日国の費目別一人当たり支出】