今回は、不動産は「一番最初に手を挙げた買い手」に売却すべき理由を見ていきます。 ※本連載は、株式会社タカ・コーポレーション代表取締役、中村 隆氏の著書『続・究極の不動産投資術』(株式会社タカ・コーポレーション)の中から一部を抜粋し、不動産の購入から、入居者募集、物件の維持管理まで、「究極の不動産投資術」の具体的な内容を解説します。

多少損をしたとしても売り時を逃すと「売れない」

不動産の売り方、それは最初の買い手に売ることです。

 

私は今まで不動産を二度売却した経験があります。いずれも最初の買い手に売却しました。やはり一度売ると決めたら一番最初に買いの手をあげた人に売るのが私なりの売り方です

 

不動産を買う時はできるだけディスカウントしますが、売る時はできるだけ買い手の意向を尊重することにしています。そうすると早く売れますので精神衛生上も楽です。指値がまったく入らない場合は仕方がありませんが、下にでも入ったらできる限り完全に売却できる方を選ぶべきだと思います。

 

なぜなら買う時は自分の意思でコントロールがききますが、売る時は相手の気が変わるリスク、目に見えないリスクがあるからです。はっきり言って株式投資と同じで不動産も売る方が買う方よりも難しいです。したがって最初の買い手に原則売却する方針をとることにしています。

 

私の友人T氏は将来千葉でアパート経営しようと土地だけ銀行から借金して購入しました。しかしアパートを建てずに5年程放置していました。この放置プレーはよくありません。なぜなら銀行の利息がかかりました。その利息を、当時サラリーマンで不動産事業をしていなかったので経費として計上できなかったのです。私の尺度ではこの土地は、毎月の元利金返済と年間の固定資産税がかかるという正に負債そのものでした。

 

だから私は彼に銀行から借金してマンションを買うようにアドバイスしました。彼も私がアドバイスした翌年2007年にマンションを函館に買ったのです。そうすると千葉のアパート用の土地はあまり戦略上必要性がないので、私は売却するようにアドバイスしました。

 

彼はその通りだと納得して当初2800万円で売りに出しました。すると半年もたたずに2700万円の指値が入りました。しかし彼はもう少し様子を見ようとして断りました。私がこの話を聞いたのは指値が入った半年後でした。なぜ2700万円で売らなかったのかと聞いたら利息等すべての諸費用を計算したらちょっと損するから断ったと答えました。私に一言相談してくれたら絶対に売却するようにアドバイスできたのにと思っても後の祭りです。

 

5年間保有して2010年4月現在もT氏の千葉の土地は売れていません。また指値も入っていません。それほど不動産の売り方は難しいのです。だから少々のことは目をつぶって売るしかないのです。売却した資金で新たな投資用不動産を購入すればいくらでも挽回はきくのです。どうかこの最初の買い手に売る原則を頭の片隅にでも常に置いてください。

収益を1円も生まない不動産は資産ではなく負債

私の二度の不動産売却の事例をこれから紹介します。

 

2006年1月31日に埼玉県の草加市にある木造2階建てアパートを、2400万円のものをディスカウントしてもらって2200万円で購入しました。当時8室あった部屋は全部空室でした。それも承知で購入しました。それはまだ2月と3月があるから入居者を募集できると考えていたからです。しかし4月になっても1室も空室は埋まりませんでした。元利金の支払いだけが毎月必ずきます。収益を1円も生まない不動産は資産ではなく負債に過ぎません。固定資産税も支払わなくてはなりません。2月に15万円支出して階段を直しました。

 

本当に金食い虫に過ぎない不動産に悩み4月5日に売却の決断をしました。指値はやはり損しない価格の2400万円にしました。すると4月30日に、「会社の寮として使いたいので」と指値より100万円下の2300万円で買い手が現れました。私は即座にそれで売ると仲介業者に伝えました。5月29日に決済しました。

 

1月31日に買って5月29日に売りましたので実質4カ月しか所有していませんでした。私はこの取引、初めての不動産売却で損しました。というのは買う時不動産手数料が75万6000円、登記費用が34万1940円かかり、売る時に仲介手数料が78万7500円かかりました。合計188万5440円支払ったので買い値より100万円高く売っても88万円の損となりました。これでも毎月家賃収入もなくただ元利金返済のみして、かつ固定資産税を払っているよりは精神衛生上ましです。だめだと思ったら収益用不動産も早く売ることです。

 

それでは早く売るためにはどうするか、次回説明します。

本連載は、2012年3月20日刊行の書籍『続・究極の不動産投資術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

続・究極の不動産投資術

続・究極の不動産投資術

中村 隆

株式会社タカ・コーポレーション

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