上司へ失望する前に知っておくべき「現実」
まずは、上司へ相談する選択肢です。この話をすると、がっかりされますよね。「うちの上司は私がつらいのに何もしてくれない」と。が、上司へ失望しつくす前に知っておいてほしいたったひとつの現実があります。あなたの上司はおそらく、あなたが苦しんでいることを「全く」知りません!
「は? 私がこんなに残業しているのに?」
「私がここまで必死で周りの尻ぬぐいをしているのに?」
そうです。あなたが残業していようが、他人のフォローに回っていようが、それが「あなたにとって負担である」ということを、上司は一切知りません。ありがたいなあ、くらいには思ってもらえているかもしれませんが、よもやあなたが嫌で嫌で仕方がないなんてこと、思いもよらないのです。
何名かの管理職をされている方へ協力してもらって「部下のことを考えた時間」を記録してもらいました。そうしたらなんと、1日のうち部下と接していたり考えていたりした時間は、全労働時間の6%にすぎませんでした。その他の時間は目の前のタスクに追われ、会議に多数出席し、自分の上司のケアをして……と、本人の業務に追われていたのです。
この数字は、私の実感ともマッチします。私はだいたい1日に3〜5件会議に出ます。移動時間も含めると業務時間のほとんどが会議か、その準備か、あるいは会議後のフォローアップに費やされます。会議で決まったことをチームに分散して依頼するときだけ、他の方のお仕事を拝見することとなるのです。そのときに初めて、社内チャットツールのログを拝見します。それもざっと読んで要点をつかみ、優先度の高いメッセージに返信するだけで手一杯。発信者が今の業務をどう感じているかを逐一察していたら、過労死してしまいます。
つまり、あなたの業務に目がいっている時間はごく限られているため、あなたが主観的にどう業務をとらえているかについては、「あなた自身の口から聞かされない限り」気づく余地もないのです。
「上司は私のことを理解してくれない」というご相談をいただくたびに、「では、上司に対して(1)自分の業務がどれほどキャパオーバーになっているか (2)具体的にどの仕事の負荷を減らしてほしいか (3)減らした業務は誰に割り振ってほしいかをセットで相談しましたか」と聞くと、驚かれます。当人はそれくらいのこと、言わなくてもわかってくれると思っていたからです。
残念ながら、わかってもらえません。そして、業務を減らすなり、変えるなりの解決策も自分で提案せねばなりません。まずは「上司へ直接言っていないことは、伝わっていない」という前提を知ってください。そして、上司に察してもらうことを諦めてください。逆に、きちんと相談さえすれば、あなたの問題は一発で解決するかもしれないのです。
トイアンナ
ライター/経営者
