1人暮らしでお金がかかる息子は「貸与型奨学金」を利用
高田義人さん(仮名・当時50歳)は、妻とともに男の子を育てるサラリーマン。小さな食品卸会社で働き、年収は440万円。妻は体調が不安定で、短時間のパートで年収100万円ほどです。
息子は入試を経て県内の大学に進学が決まったものの、距離的な問題で一人暮らしが必要な状況でした。教育資金はある程度貯めていたものの、住宅ローンの返済などもある状況。子どもを大学に行かせるのであれば奨学金の利用は必須と考えました。
とはいえ、息子に家計の詳細を伝えることは親として憚られました。そのため細かなことは伝えずに申し込み。貸与型の奨学金月10万円を4年間借りることになりました。
奨学金で足りない分は、高田さんの仕送りと息子のアルバイトで補填。決して楽ではありませんでしたが、なんとか4年間の大学生活を乗り切りました。
高田さんは、息子本人が勉強をするために必要なお金なのだから、息子が返済するものだと考えていました。当時はピンときていなかったようですが、息子にも「就職したらお前が返すんだぞ」と申し込み時に伝えたつもりでした。
しかし、高田さんの考え通りにはいかなかったのです。
奨学金返済を肩代わり、老後資金も貯められず……
大学卒業後、息子は就職のために上京。今度は東京で一人暮らしをスタートしました。ところが、1年ほどたった頃に突然会社を退職。会社の人間関係で何かあったらしいのですが、それ以上のことは話してくれません。そして、その後はアルバイトで生活するようになりました。
その結果、奨学金の返済が滞るように。高田さんは再就職をしてきちんと返済するように伝えますが、「この1年、返済するのが本当に大変だったよ。そもそもこんな大金、20年もかけて全部俺が返すの? 酷いんじゃない、それ」と返されてしまいました。
息子は返済する段階になって、ようやく借りたお金の重さに気づいたとのこと。一方の高田さんは、教育費の準備は親の義務という声もある中で、息子に借金を背負わせたことに負い目を感じていました。
結局、奨学金の返済は高田さんが肩代わりすることに。総額400万円以上の返済は、老後を控えた高田さんにとってあまりに大きな負担でした。
「借りる時に、ちゃんと返済のことを話し合えばよかったです。そうすれば、定職に就くことに対する意識ももっと高まったかもしれません。今後、息子がちゃんと働いて、返済をしてくれるようになればいいんですが……」
高田さんは、息子の将来と自分たち夫婦の老後資金に不安を抱えながら生活をしています。
