今回は、偽物が多い「エメラルド」と「ジェード」の見極め方を見ていきます。※本連載は、諏訪貿易株式会社の会長として、世界各国の宝石および宝飾関連業者とのビジネスを行っている諏訪恭一氏の著書、『価値がわかる 宝石図鑑』(ナツメ社)の中から一部を抜粋し、主要な宝石について、その価値や品質、選び方などを紹介します。

高価ゆえに偽物が多い「エメラルド」

エメラルドは無処理のままで美しいものはごくわずかです。そのため古くから表面のキズにオイルや合成樹脂を含ませ、キズを隠す処理が行われてきました。

 

石自体の割れ目が少なく、含浸が軽度のものなら年月を経ても変化はわずかですが、割れ目が多く含浸が極端なものは数か月で色あせたり、キズが目立つようになります。

 

下記写真のオーバルのエメラルドは、処理された状態からオイルを抜いたものです。比べると一目瞭然で、キズが目立ちます。処理により欠点が隠された宝石は価値が低いだけでなく、宝石と呼べるかどうかを問う必要があります。

 

 

美しいエメラルドは高価なため、合成石を宝石であるかのように言いつくろって販売する事例が古今東西、業者の大小にかかわらず後を絶ちません。

 

 

アクセサリーとしての販売はともかく、宝石だと偽って販売するのは詐称行為であり、不誠実です。模造石には、色ガラスや天然石を合成石と張り合わせたダブレットなどが多く見られます。

 

多くの模造品が出回る「インペリアルジェード」

ジェードの鉱物種ジェダイトは小さな結晶の集合体であるため、樹脂含浸や着色が容易です。

 

特に樹脂含浸ジェダイトは一見しただけでは無処理のジェダイトと区別できないので、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)での確認が必要です。樹脂含浸ジェダイトは宝石としての価値がありません。

 

 

FTIRでは、無処理のジェダイトは波長3000前後のスムースな線に、樹脂含浸したものは凹凸のある線になります(下写真)。

 

 

価値がわかる 宝石図鑑

価値がわかる 宝石図鑑

諏訪 恭一

ナツメ社

宝石とは大自然が生み出し、美しく永く身に着けられて価値を持ち続けるもの。本書では、主要な宝石について、美しいジュエリーの写真とともにその価値や品質、選び方などを丁寧に紹介しました。品質・市場価値の目安を3段階で…

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