今回は、「宝石」の資産価値が比較的安定している理由を見ていきます。※本連載は、諏訪貿易株式会社の会長として、世界各国の宝石および宝飾関連業者とのビジネスを行っている諏訪恭一氏の著書、『価値がわかる 宝石図鑑』(ナツメ社)の中から一部を抜粋し、主要な宝石について、その価値や品質、選び方などを紹介します。

新品と中古の差がほとんどない「宝石」

宝石の原石は、地中から採取され、研磨地に運ばれます。そして美しく磨かれ、国際的な展示会や相対の取引で作り手に渡ります。作り手は宝石の装身具を構想し、合わせて使う素材を集めてプロトタイプを作り、永く身に着けられるものに仕立てます。売り手は店舗を構え、宣伝し、説明できる販売のスタッフを育てて準備を整えます。

 

宝石の値段は原石を見つけるところから店舗のスタッフの人件費までを含めた、すべての費用の合計です。買い手はその費用を払って宝石を手に入れているのです。

 

ほとんどの商品は使用すれば価値はなくなります。それなのに宝石は、なぜ資産価値が残るのでしょうか。それは宝石が変質しにくく、丁寧に使えば傷みが少なく、新品と中古の差もなく流通するからです。

 

本書に掲載されている約半分の装身具は、筆者の友人・社員・家族が気に入って身に着けているもので、まったく古さを感じさせません。現在の価値が支払った価格の半分なのか4分の1なのか買ったときと同じなのかは、個別に、また、どれだけ年月を経たかで異なります。

 

金属が変色した装身具(左)が、バフ仕上げをしてもとの美しさを取り戻した(右)。宝石はほとんど劣化していないので、サファイヤブローチがまさに新品同様の美しさとなった(個人蔵)
金属が変色した装身具(左)が、バフ仕上げをしてもとの美しさを取り戻した(右)。宝石はほとんど劣化していないので、サファイヤブローチがまさに新品同様の美しさとなった(個人蔵)

 

以前にこういう例がありました。妙齢のご婦人が、20年前に逸品では定評のあるお店で2200万円で買った6ctのぺアーシェイプのダイヤモンドを日本のオークションで、なんと同額の2200万円で売却できたのです。孫の教育資金にすると喜んでおられました。

 

金利がほとんどつかなかった20年間にこの指輪を十分に楽しんで、また次の方に受け継いで行くのはすばらしいことだと思います。

 

一方、同じ頃にフランスの宝石店で1000万円で買った18金と小粒ダイヤモンドのたくさん入ったネックレスは、オークションの見積価格が100万円にしかならなかったという例もありました。

 

ジュエリーは高い費用を払って手に入れるものなので、使えることを前提に、それが資産価値の高いものなのか、楽しむことに重点が置かれたものなのかを納得したうえで、購入を決める必要があります。

常に一定量が売買されているため、価格の安定性が高い

グローバルに見て、宝石の価値は変わりにくいと考えられます。現在、地上にある宝石の98%は世界各地の個人が所有しています。広く分散しているのでわかりにくいのですが、ストックは大きく、常に一定量が売買されているので、宝石の価値は比較的安定しているのです。

 

しかし、19世紀のアメシストのように、ブラジルとロシアから大量に産出して値下がりしたとか、2005年ごろから大粒のダイヤモンドやルビーに金あまりの資金が投入されて、3~4倍に値上がりしたなどの部分的な価値の変動はあります。

 

また、宝石の取引はドル建てが基本なので、むしろ為替の10~20%の変動がローカル相場を左右することに注意を払う必要もあります。100年単位で見ると宝石の価値が上がったように見えるのは、貨幣価値が下がった結果で、基本的な宝石の価値は変わっていないのです。

宝石は「約30年」で持ち主を変える

平均して一つの宝石は、30年くらいで持ち主を変えると考えられています。世代交代によって一族で受け継がれたり、オークション等の市場で流通していきます。土地と同じように、人から人へ渡されて使われていくのです。

 

21世紀になり、今後は資源の枯渇や環境問題、発展途上国の人件費の高騰が予測されることから、人々が持っている宝石が流通する市場は、これからきちんと整備されると思います。本物の宝石は価値を持ち続けて、今後はさらに盛んに流通していくのでしょう。

 

プラチナとサファイヤのリング、プラチナとダイヤモンドのリング(2点)。硬度が高く希少で美しい宝石は、世の中のはやりすたりからは無縁で、いつの時代も価値を持ち続ける(個人蔵)
プラチナとサファイヤのリング、プラチナとダイヤモンドのリング(2点)。硬度が高く希少で美しい宝石は、世の中のはやりすたりからは無縁で、いつの時代も価値を持ち続ける(個人蔵)

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