プロでも困難なときがある「宝石の判定」
1904年、フランス人の化学者ベルヌーイがルビーの合成を公表しました。しかし、合成と表示せずに販売したために世界中の業者が本物として扱い、天然ルビーの信頼性が大きく損なわれたのです。これを機に必要性が高まり、宝石学が一気に進歩・普及したのは皮肉なことです。
こんなことがありました。21世紀になった頃、ニューヨークのアンティークジュエリーショーで、18金の台に1ctの美しいルビーが入ったリングを仕入れました。
ティファニー社の刻印が入ったもので、出展者も信用できる人物だったこともあり購入を決めたのですが、後に真偽の判定をしたところ、合成ルビーとわかったのです。出展者も気がつかなかったとのことで、返金されて、ひどく申し訳なさそうでした。
誰かが中石をすり替えて流通させたのか、あるいはリングを作ったときにすでに合成だったのか結論は出ませんが、宝石の判定は素人はもちろん、プロにも困難なときがあるのです。
「拡散加熱処理」された石は機器を使えば見抜ける
拡散加熱処理は、鉱物を加熱して、微量の元素を拡散、浸透させて色を改変することをいいます。単なる鉱物が美しい色に仕上がりますが、それは紛れもなく人工着色で、宝石としての価値はありません。
十数年前から表面拡散処理したブルーサファイヤや、ベリリウム元素を加えて拡散加熱したパパラチヤサファイアが市場に出回りました。ラボは機器を使って完全に見抜くことができますが、還流品にも混入している可能性があるので注意が必要です。
合成・模造石が多いサファイヤ…海外での購入は要注意
ルビーの合成に成功したベルヌーイはサファイヤの合成も成功させています。サファイヤは古来より多くの人々に好まれたがゆえに、合成、模造石が多い宝石ですが、内包物をはじめ天然とは異なる要素が多いため、プロにはほとんど見分けがつきます。海外でよく見かけるみやげ物店の合成・模造の偽物には注意が必要です。