磨く前なら、形と肌合いで容易に見分けることが可能
国際鉱物学連合内に設置されている新鉱物・命名・分類委員会は、鉱物を「一定の化学組成」「一定の結晶構造」「地質学的な過程を経てつくられた」ものと定義しています。人工生産物は、地質学的な過程を経てつくられていないので鉱物ではありません。これは宝石においても同じです。
自然のものと人工生産物の区別は、磨く前なら、その形と肌合いで容易に見分けることができます。
下の写真は肉眼で見る自然のままのソーヤブル(正八面体)、イレギュラー、クリバージの原石と、その表面の肌合いを微分干渉顕微鏡で撮影したものです。ソーヤブルとクリバージは、トライゴン(正八面体の面に見られる三角形の痕跡)がはっきりと確認できます。
ダイヤモンドは研磨すると、合成との区別に機器が必要となりますが、研磨時にこうした小さな自然の肌を残しておくと、10倍のルーペや微分干渉顕微鏡で、天然であることが確認できます。自然の肌やインクルージョンの内包が、ダイヤモンドの価値を高める日が来るかもしれません。
人工的な処理で、低品質のダイヤモンドも美しくなる
ダイヤモンドは比較的、処理されることが少ない宝石ですが、近年では放射線照射や高温高圧で処理して、茶色を無色にしたり、ピンクや青色へ色の改変を人工的に行っているものを見かけます。
レーザーでダイヤモンドに穴を空けて内部のダークインクルージョンを焼き切ったり、面に到達している“面キズ”に液体鉛を含浸させてキズを目立たないようにすることもあります。
これらは低品質のダイヤモンドを処理して美しくしているため、宝石としての価値は低いものです。
天然と合成の見分けが難しい研磨後のダイヤモンド
1970年にゼネラル・エレクトリック社が宝石品質の合成ダイヤモンド製造(HPHT、高温高圧法)に成功しましたが、市場に出始めたのは2002年頃からです。現在はCVD法(化学気相蒸着法)が主流で数社が販売しています。技術のさらなる進歩が生産量を増やし、需要を十分に満たすので希少性はありません。
微分干渉顕微鏡で表面を見ると、自然の肌との違いはもちろんのこと、HPHTとCVDの違いも見てとれます。研磨後のダイヤモンドは天然と合成の見分けがつきませんが、FTIR(フーリエ変換赤外線分光光度計)などの機器で見分けるのは可能です。