お父さん、ひどい!財産7,000万円はすべて長男と「尽くしてくれている」嫁に…久しぶりに帰省した〈48歳・薬剤師の長女〉が85歳父のひと言に膝から崩れ落ちたワケ【弁護士の助言】

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遺言書を作成するにあたり、家族同士で話し合って作成すれば、トラブル発生のリスクを軽減させることができます。しかし、話し合いにあたり、親側が一方的に無理な要望を通そうとすると、逆に家族関係が壊れてしまうことがあります。本記事では、親側が一方的な意見を通そうとして発生してしまった悲劇と、それを回避するための家族同士の話し合いと遺言書の作成の重要性について、三浦裕和弁護士が具体的な事例を交えて解説します。

沙織さんが相続放棄をすることはできたか?

では、庄司さんが沙織さんを説得し、相続放棄をさせることはできたのでしょうか。

 

結論として、そもそも庄司さんが存命の間は、沙織さんが相続放棄をすることはできません。

 

なぜなら、それを認めてしまうと、被相続人や他の相続人が特定の相続人に圧力をかけ、相続が開始する前に相続権を奪うことが可能になってしまうからです。また、仮に相続人自身が本当に相続を望まない場合でも、被相続人が亡くなったあとに、遺産の額やそのときの状況を考慮して放棄すれば足ります。

 

民法上も、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」(民法915条1項)と規定されており、相続放棄は相続が開始したあとに初めて行うことが前提とされています。

 

したがって、法的に相続開始前の相続放棄は認められておらず、庄司さんが沙織さんを説得して相続放棄をさせることはできませんでした。仮に沙織さんが「相続放棄をする」といった念書を書いたとしても、法的な効力はなく、むしろ庄司さんが亡くなった際に新たな相続トラブルの原因となる可能性がありました。

 

どのようにすればよかったのか?

庄司さんが法的に有効な形で沙織さんに依頼する場合、「真一さんに全財産を譲る」という内容の遺言書を作成したうえで、沙織さんに対し、民法1049条に基づく遺留分の放棄を求める必要がありました。

 

遺留分は相続分とは異なり、以下のとおり、相続が開始する前に放棄することが法律で認められています。

 

民法第1049条 「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」

 

このように、相続が開始する前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可が必要です。これは、被相続人や他の相続人からの圧力によって、意思に反して放棄してしまうことを防ぐための制度です。

 

したがって、本件においては、沙織さんが自身の意思に基づき、家庭裁判所に遺留分の放棄を申し立てていれば、庄司さんの希望する「真一さんに全財産を譲る」という相続を実現することが可能でした。

 

しかし、沙織さんは自分が遺産を受け取れないことをまったく想定しておらず、納得もできない状況でした。そのうえ、何らの対価もないまま遺留分の放棄を申し立てることは、現実的に考えにくいと言えます。

 

したがって、沙織さんが強く反対している以上、庄司さんの希望する「真一さんに全財産を譲る」という相続を実現することは極めて困難であったと言わざるを得ません。

まとめ

以上のとおり、庄司さんが沙織さんの意思に反して相続分を奪うことはできないため、庄司さんが真一さんにすべての財産を、トラブルを生じさせることなく譲ることは非常に困難です。

 

また、仮にそれを実現させたとしても、庄司さんが亡くなるまで真一さんが本当に宣言どおり面倒を見てくれるかもわかりません。

 

推定相続人の廃除の申し立てが必要な場合は別として、それ以外のケースでは、強硬な手段をとるよりも、できるだけ円満な形で話し合いを行うことが、結果的に良い解決につながることが多いです。

 

相続の実現方法に悩んだときは、いきなり強硬な策を講じるのではなく、弁護士などの専門家に相談し、法的に可能なこと・不可能なことを整理することが重要です。そのうえで、より良い解決に向けたサポートを受けることが、希望する相続の実現につながります。

 

三浦 裕和

弁護士

 

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