相続人、税務署それぞれの主張とは…
今回の争点は、訴訟中の債務が「確実と認められる債務」に当たるかという点です。
相続税法では、相続開始時点で「確実と認められる債務」に該当するものは相続税の課税価格から控除できます。しかし、本件ではAさんが生前に支払いを拒否し、さらに相続人と請負業者の間で訴訟が続いていたため、本当に「確実と認められる」といえるのかが問題となりました。
■相続人の主張
相続人は、違約金の支払い義務は契約解除時点で発生しており、訴訟中であっても「確実と認められる債務」に該当すると主張しました。
確かにAさんが支払いを拒否したのは、違約金の「金額の妥当性」を問題としたからで、債務の存否を否定するものではありません。また、相続人が提起した反訴も、違約金の無効を求めるものではなく、請負業者の説明義務違反に基づく損害賠償請求です。
つまり、この違約金自体はたしかに存在しているため、相続税の課税価格から控除されるべきであるというわけです。
■税務署の主張
これに対して税務署は、本件違約金が「確実と認められる債務」には該当しないため、控除は認められないと反論しました。
Aさんが生前、違約金について消費者契約法違反の可能性を指摘し支払いを拒否していたことからこの債務は確定していないとし、さらに、訴訟が継続しており支払い額も未確定である以上、「確実と認められる」とは言えないとの反論にも道理はあるように思えます。
結果は相続人の勝訴…国税不服審判所の判断
国税不服審判所は相続人の主張を認め、この違約金は相続税の課税価格から控除すべき債務であると判断しました。
違約金の支払い義務は契約解除時点で発生しており、その履行を免れることはできません。Aさんが生前に支払いを拒否していたとしても、それは金額の妥当性の問題であり、債務の存否とは無関係とされました。
また、相続人との訴訟の争点も債務の存否ではなく、支払い義務自体が消滅することはありません。そのため、相続開始時点でこの違約金は「確実と認められる債務」に該当し、控除が妥当と判断されました。
相続対策の借り入れ・契約は「いざというときに争いにならないか?」という視点が重要
相続税の計算では、契約に基づく債務は、「確実と認められる」場合に限り控除が認められますので、債務が争いの対象となっている場合、その適用は慎重に判断されます。
相続対策としての借り入れや契約の整理は、「いざというときに争いにならないか?」という視点を持って行うことが大切です。
契約内容を明確にし、必要に応じて専門家と相談しながら進めることが、こういったトラブルを防ぐカギとなるでしょう。そもそも争い自体がないに越したことはないのですが…。
高橋 創
税理士
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