(※写真はイメージです/PIXTA)

親の世代が築いた資産を受け継ぐ「相続」。人生における大きな転換期となることも少なくありません。本記事では、両親の死をきっかけに富裕層になったAさんの事例とともに、相続のあとの資産との向き合い方について社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

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富裕層となった理由

Aさんはひとりっ子なので、両親の法定相続人はAさんのみです。Aさんの両親は小さいながらも会社を経営していました。両親はAさんに会社を継がせようと大変厳しく育てました。

 

将来、グローバルなビジネスシーンで活躍できるよう、Aさんはインターナショナルスクールに通い、複数の外国語を猛勉強。さらに父親は「頭がよいだけではダメだ」と、運動が苦手なAさんに極真空手を習わせ、精神力、忍耐力を養わせようとしました。また、Aさんが常にリーダーシップを発揮できるようにならなければならないと考えていました。ある日、授業参観でAさんがグループワークの際にリーダーシップを発揮できていなかったのを見た母親は、帰宅後に父親に授業の様子を報告。父親はAさんを殴りつけました。

 

Aさんは両親の期待に応えようと必死でしたが、その厳しさに苦しむことも多々あったのです。あまりにも熱心な教育方針に反抗したAさんは、逃げるように昼も夜も外で遊ぶようになります。結局、Aさんは両親に反抗したまま家を飛び出し、地元を捨てて遠方に移住。連絡することはありませんでした。

 

そのような関係でも子どもが生まれたときには連絡をしたようですが、Aさんの両親はAさんたちを追い返したのです。それからはさらに疎遠になってしまいました。その後両親の会社は、右腕となって働いていた方に事業承継し、父は亡くなるまで会長として会社経営に携わっていたそうです。

 

両親と疎遠だったAさんは、親の財産なんて知るわけがありません。両親は事故死でした。会社を継いだ社長から訃報の連絡を受け、話を聞きます。

 

「会長(父親)は近ごろ、Aさんとの関係を非常に後悔していました。実はAさんに子どもが生まれて連絡してきたときは、会社の経営が厳しく立て直しに奔走していた時期だったのです。経営が再建できてから、Aさんを追い返したことを悔やんでいました。いつか連絡をしたかったはずなのに、今回事故で亡くなられてしまい、無念だったと思います。会社の経営が上向きになり、少しでもAさんに財産を残したいと話をしていたところでした」

 

Aさんは会社の顧問税理士から、両親が公正証書遺言を作成していたことを知りました。相続財産と死亡保険金等を含めると、3億円相当もあるとのことです。Aさんと妻は、そのとてつもない金額にびっくりしました。

 

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