(※写真はイメージです/PIXTA)

親の介護やサポートは、多くの人が直面する課題のひとつです。しかし、どこまで関わるべきか、金銭的な負担をどうするかは、それぞれの家庭によって異なります。最初は助け合いのつもりでも、気づけば負担が偏り、親子関係に摩擦が生じることも少なくありません。今回は、親を支えたいという気持ちが思わぬ軋轢を生んでしまった歩美さんのケースをもとに、無理のないサポートの仕方やお金の負担のバランスについて、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが適切な距離の取り方と具体的な対策について解説します。

タクシー代として月1万円を渡したが…

父親は大腸がんの手術のあと、いきなり血尿が出て泌尿器科に入院するなどバタバタした日が続き、その都度、母親を迎えに行って病院に向かい、病院のあとは母親を自宅まで送っていき、自分の家に帰り、仕事をするという日々が続いていました。歩美さんの家から両親の家(実家)までは車で20分程度です。そして、両親もともに80代になり、病院に行けば何らかの異常が見つかるといった状態に。

 

しかし、フリーとはいえ歩美さんも仕事をしています。案件が重なるときもあれば、締め切りに追われるときもあり、そのときは仕事を優先するため、必ず対応できるとは限りません。病院に通う際には両親は必ず一緒に行動します。父の診察日には母もついていくし、逆もしかりです。

 

また、診察の予定時間が早いときは、ラッシュ時の公共交通機関に乗るのが苦になるとのことで、そのときに頼られるのが歩美さんでした。最初は車での送り迎えだけでよかったものの、徐々に病院が終わるまでついていなければならない雰囲気になり、歩美さんも仕事に支障が出てくるようになってしまったのです。

 

そのため、「今後の病院通いは私が送っていけるときは対応するけれど、できるだけ仕事を優先させてほしい」とお願いし、その際に月のタクシー代として毎月1万円を手渡すことにしました。

 

父と母の診察日が一緒の日に重なるとは限らず、1ヶ月で10日程度はタクシーを使います。年金暮らしの夫婦にタクシー代は負担だろうと思っての歩美さんなりの気遣いでした。

 

その後、歩美さんも仕事に専念できるようになり、ほっとしていたところ、母から「タクシー代をもう少し出してもらえないかしら」と言われたのです。「毎月どのくらいかかるの?」と聞くと、約3万円とのこと。さすがにそれはかかりすぎでは? と思った歩美さんは、「タクシーを使うのは病院に行くときだけのはずなのに、なんでそんなにかかるの?」と聞いたのです。

 

すると、最近では病院に行った帰りは病院の近くにあるデパートで買い物をするため荷物が多くなったり、病院やデパートを歩き回るので疲れたりするからと帰りもタクシーを使っているとのことを悪びれもなく話したのです。

 

さすがにそこまでの費用を自分が負担するのは違うと感じた歩美さん。さらに、すべてを任されるとなると、まるでただの運転手兼荷物持ちのようだと思えてきました。

 

「自分が手伝える範囲で手伝うけれど、どうしてもできないときがある。だから、そのときにはこのお金を使ってね」という意味で1万円を渡していたのに、母親は当然、歩美さんが全額負担してくれると思っていたようです。

 

しかし、歩美さんの収入で3万円を毎月渡すのは家計に負担がかかります。そのため、「2万円までが限界だよ」と答えると、母親が激怒したのです。

 

「あんたは、お金を出すだけで結局私たちの面倒なんてみていないじゃない。そんなの何の頼りにもならないわ。タクシー代月1万円じゃ足りないわよ!」と言われ、さすがに歩美さんもショックを隠しきれませんでした。

 

実は歩美さんには妹がいて、妹は結婚して子どももいます。ただ、夫の仕事の関係で海外に住んでいるため、歩美さんの代わりに病院の付き添いや買い物の付き添いをお願いすることはできません。

 

母親は追い打ちをかけるように「歩美は子どもを産んでいないから、親の気持ちなんかわからないのよ。そんな子に面倒みてもらいたくないわ」といい、歩美さん自身は子どもを産んでいないことについて何も思っていなかったのですが、「いくら親でもそれは他者に言ってはいけないことでしょう」と憤りを隠せませんでした。

 

結局、その後は毎月2万円を渡し、毎朝ラインでやりとりをし、緊急な事態が発生したときには、仕事よりも親の介護を優先する生活に。最近では父親の心臓の具合が悪くなったり、母親が肺炎になったりしたときには、仕事を後回しにして付き添いました。しかし、母親とのわだかまりはなかなか消えません。

 

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