(※画像はイメージです/PIXTA)

生前の遺言作成は、円滑な遺産相続に重要な役割を果たします。しかし、保管方法を間違えて遺言を見つけてもらえないケースや文面上の不備によって無効になってしまうことも。本記事では、終活コンサルタントの長谷川裕雅氏の著書『磯野家の家じまい』(リベラル社)より一部を抜粋・再編集して、多くの方に親しまれている「磯野家」をモデルケースに、遺言の書き方とポイントについて解説します。

やるべきこと: 公正証書遺言の活用

公正証書遺言は、公証人が作成に関与し、法的有効性が確保されるため、前述のリスクを回避できます。公正証書遺言を作成すれば、遺言の内容が確実に実行されます。

 

遺言を確実に有効にするためには、自筆証書遺言は避け、できる限り公正証書遺言を作成することが重要です。これにより、家族の間のトラブルを回避し、被相続人の意思を確実に伝えることができます。

 

このように公正証書遺言の作成をお勧めしますが、念のため自筆証書遺言を作成する際に気を付けたいポイントについて解説します。

 

すべて自筆で作成すること

自筆証書遺言は基本的に、全文を自筆で作成する必要があるため、形式に不備があると無効になる可能性が高いのが最大の問題点です。

 

また、専門知識がない方が遺言を作成すると、内容が不明確になり、相続人間で解釈が分かれ、争いの原因になります。

 

日付を記入すること

自筆証書遺言では、日付を記入することが法律で求められています。

 

日付が「〇月吉日」などの不明確な記載をした場合や記入漏れがあると、遺言全体が無効になる危険があります。日付が重要な理由は、複数の遺言が存在する場合、日付が不正確だとどれが最新のものかが判断できず、相続手続きが複雑化する可能性があるからといわれています。

 

そのため、日付は具体的に「〇年〇月〇日」と記載することが必須であり、これを欠くと遺言の効力が認められない場合があります。

 

自署・押印をすること

遺言者本人が氏名を自署し、押印することが法律で求められています。

 

氏名の記載がない場合や、代筆や印刷で作成されたものは無効とされます。

 

印鑑は実印でなくても構いませんが、認印やシャチハタでは信頼性が低く、相続人間で紛争に発展する原因となる可能性があります。

 

特に、署名が不完全だったり、押印が省略されていたりすると、遺言自体の法的効力が認められないため、注意が必要です。

 

正しい方法で加除訂正すること

遺言内容を加除訂正する場合には、法律で定められた正しい方法を守る必要があります。

 

具体的には、訂正箇所を二重線で消す、二重線の近くに訂正する内容を記載し、さらに訂正箇所に印を押すことが求められます。

 

また、遺言書末尾に「何字を訂正した」などを記載する必要があります。

 

これらの手続きが守られていない場合、加除訂正部分は無効となり、遺言全体の効力に影響を及ぼす可能性があります。

 

たとえば、波平が自筆証書遺言を作成し、相続財産の分け方を変更しようとした際に、正しい処置を行わなかった場合、その部分が無効となり、相続人間の争いになる可能性もあります。

 

適切な場所に保管すること

自筆証書遺言を適切な場所に保管することが非常に重要です。

 

そうしないと、遺言書が家族や相続人に発見されず、存在しないものとみなされ、波平が意図した遺産分割が実現しなくなってしまいます。

 

また、自宅で保管すると、紛失や火災、相続人による改ざんや隠蔽のリスクもあります。

 

自筆証書遺言を法務局で保管する制度が整備されていますが、この方法を利用すれば、安全性と確実性を高めることができます。家庭裁判所での検認も不要になるため、相続手続きがスムーズに進みます。

 

正しい保管方法を選ぶことで、遺言が確実に家族に届き、波平の意思が尊重される相続が実現します。

 

 

長谷川裕雅
永田町法律税務事務所代表
終活コンサルタント

 

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※本連載は長谷川裕雅氏の著書『磯野家の家じまい』(リベラル社)より一部を抜粋・再編集したものです。

磯野家の家じまい

磯野家の家じまい

長谷川 裕雅

リベラル社

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