今回は、死後、「内縁の妻」に財産を残すことはできるのかを見ていきます。本連載は、日本公証人連合会理事・栗坂滿氏の著書、『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』(エピック)の中から一部を抜粋し、遺言、相続にまつわるトラブルとその予防・解決法を紹介します。

遺言書に「内縁の妻」への遺贈も記載したが・・・

≪トラブルの事案≫

Aさんと妻Bさん夫婦には子どもCがいましたが、夫婦仲が悪化し、昭和40年ころにAさんが家を出て別居状態になりました。Aさんは、昭和42年ころに30歳余り年下のDさんと知り合って交際を始め、昭和44年9月ころからAさん所有のマンションで同棲するようなりました。Aさんは昭和50年10月25日に亡くなりましたが、その約1年2か月前ころにAさんは財産をB、C(既婚、職業あり)、Dの3人に残す旨の次のような遺言書を書いていました。

 

 

Aさんを頼りにしてきた内妻のDさんは遺言書があったので安心しましたが、妻のBさんから、Aさんが不倫相手に財産を遺贈するのは公序良俗に反し無効であるので「Dさん、あなたは夫の財産を継ぐことはできない」と言われてしまいました。

 

不倫関係は公序良俗に反するため、遺言書は無効!?

≪トラブル診断≫

民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と規定しています。このいわゆる公序良俗に反する法律行為とは、①人倫に反する行為、②正義の観念に反する行為、③個人の自由を極度に制限する行為、④暴利行為等と説明されています。

 

Aさんは妻Bさんと法律上の夫婦関係にありながらDさんと不倫関係という人倫に反する行為、つまり公序良俗に反する行為に走ったのであり、そのような不倫の相手方に対する遺贈は公序良俗に反して無効であるというのがBさんの主張だといえます。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年8月1日刊行の書籍『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

栗坂 滿

エピック

「あなたの遺言書の書き方は正しいですか?」 間違った遺言書はトラブルのもと!! 正しい遺言書・公正証書の書き方40例を解説

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