送金・決済手数料の安さ、取引の速さなど魅力は多数
それでは、今、多くの人を惹きつけているビットコインの魅力とはなんなのだろう。まずフィンテックという側面から見ると、送金や決済でのコストと時間の節約が上げられる。
ビットコインは、銀行などを介さず個人間での送金が可能だ。その際にかかる手数料が格安なので、少額の決済取引がスピーディーに世界中のどこでもできる。例えば、邦銀から海外銀行に送金した場合、手数料率は3〜8%ほどかかる。10万円海外送金した場合は、3000〜5000円かかり1週間ほどの日数を要する。
一方、ビットコインの手数料は、10万円ほどの送金額であれば、わずか10円ほどだ。手数料率は0.01%と格安なうえ、送金先の口座に反映するのは1時間くらいと極めて短時間に送金を終えることができる。手数料、経過時間は実際の窓口、金額で多少異なるが、手数料が圧倒的に安いことに変わりはない。
また、ビットコインには既存の通貨からの逃避先としての側面があることも忘れてはならない。
ビットコインが誕生したのは、2009年1月とわずか7年半前の話だ。サトシ・ナカモトと名乗る人物による論文に基づき運用がスタートした。2009年は、リーマン・ショックの真っ只中で、市場は警戒感に覆われていた時期だ。
先行きの不透明感がかなり高まっていた時期、つまり既存の金融システムが崩壊寸前となったタイミングで、この仮想通貨の運用はスタートしたことになる。
ビットコインは、こうした金融危機や通貨への不安が高まると避難先として利用され、ユーザーを爆発的に増やしてきた。そして、購入する投資家が増えることで、ビットコインの価値(価格)は上昇した(価格が変動する点は、株や債券などの金融商品と同じ)。代表的なのが、2013年に発生したキプロスショックや、人民元安に対する警戒などだ(右表参照)。
通貨や株式などいわゆる伝統的な金融資産への警戒感が高まると、相対的に資金が流入するという構図だが、これは、価値の保存手段として、金や美術品などと同じような意味合いを有していると言えよう。
「改正資金決済法」によって、より信頼性の高い財産に
ビットコインの取り扱い量は、中国での取引が全体の約8割を占めている一方、日本の市場はまだまだ小さい。実際、ビットコインで支払いができる店舗はまだ1000店ほど。その背景の1つに「マウントゴックス事件」があることは否定できないだろう。
2014年、東京に本社を構えていたビットコイン取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の破綻は、投資家に大きな警戒感を与えた。
マウントゴックスは、世界の取引高シェアで一時70%を握り、当時世界最大のビットコイン取引所だった。バグの悪用によってビットコインが盗まれた可能性が高いとして、当時の価格で約470億円のビットコインが消失したという。これが引き金になり、ビットコインの価格が大幅に下落したことは記憶に新しい。
しかしこの一件は顧客の口座にあるビットコインを容疑者が不正に操作して私的流用した(とされる)ことにその本質があり、ビットコインのセキュリティが弱かったわけでも、ビットコイン(ブロックチェーン)が改ざんされたわけでもない(こういった誤解を招いた点では、当時の日本における報道のされ方に改善の余地があったものと思われる)。
実際ビットコインのシステムそのものはまったく問題なく稼動を続けていることで、むしろ、不正をすることが難しい、信頼性の高いものであったと、ビットコインへの信頼は回復しつつある。また、この一件がきっかけとなって、国による法整備の動きが加速し、16年5月に改正資金決済法が可決・成立している(下記図表参照)。