政府や中央銀行が一切関与しない「仮想通貨」
仮想通貨という言葉が、金融業界のなかでも当たり前のように使われるようなったが、その発端となったのはビットコインだ。
その後、さまざまな仮想通貨が誕生し、7月末時点の時価総額は130億ドルが流通している。しかし、このうち約100億ドルがビットコインと言われており、知名度が高いイーサリアム、スティーム、リップル、ライトコインを合わせても20億ドルほど。
実に世界で流通している仮想通貨のうち、4分の3以上がビットコインということになる。
まさに仮想通貨の代名詞とも言えるビットコイン。その単位はBTC(ビーティーシーもしくはビットコイン)で、1BTCと数える。政府や中央銀行などが一切関与していないほか、どこかの企業が運営しているわけでもない。
発行体が一切存在していない点が、円やドルなどの既存通貨、そして、JR東日本が手掛けるSuica(スイカ)や、セブン&アイが展開するnanaco(ナナコ)、イオンが展開するWAON(ワオン)など電子マネーとも大きく異なる。
その最大の特徴は、複製や改ざんといった懸念をほぼ完全に払拭し、中央集権的な管理者を介在させることなく仮想通貨として実現させていることだろう。そしてその仕組みを基幹技術として支えているのが「ブロックチェーン」だ。
記録がブロックにまとめられ、チェーン状に管理される
仮想通貨と言っても、あくまでもコンピュータ上の電磁的記録であるため、通常は「通貨」そのものが目に見える形で存在していない。
あるのは、「どのアドレスからどのアドレスに何単位が移転したか」という価値の移転情報(取引情報)で、会計で言うところの仕訳情報が電磁的記録として暗号化され、データ化されたものと考えられる。
ブロックチェーンでは、インターネット上の各端末同士が相互に取引情報(台帳)を共有する(インターネット上に分散して複製を有する)ことと、複数の暗号技術の組み合わせにより、特定の悪意ある何者かによって、金額や取引内容を改ざんされることが実質的に不可能となっている点にその大きな特徴がある。
ちなみに、ブロックチェーンという名前の由来は、複数の取引情報が「ブロック」という単位にまとめられ、そのブロックが1本に連なった「チェーン」状になって管理されることにある。日々発生する新たな取引がブロック単位にまとめられて、ブロックチェーンの最後尾に次々と追加されるようになっている。
また、ブロックとブロックをハッシュ値という特殊な数値でつなぐことによって、ブロック内容の改ざんを防いでいる(下記図表参照)。
この基盤技術は、特段の新規性をもったテクノロジーではなく、どちらかというと世に出て時間が経った、すでに「枯れた」既存技術を組み合わせて実現させている点も見逃せない。
新規の技術であれば未知の不具合などが発見される可能性が相対的に高いが、ブロックチェーンで使用されている技術は、年月を経て枯れたものだからこそ、その安定性が相対的に保証されていると言える。
ビットコインのプログラムコードや取引記録は世の中に公開されていて、ネットワークに参加する人は誰でも見ることができる。参加者すべてがネットワーク上で分散管理するというわけだ。
ただ、ここでキーポイントとなるのが、取引記録を承認し、新しいブロックを作成するには、ネットワーク参加者の誰かが承認作業(マイニング)をしなければならないという点にある。
ビットコインプログラムには取引記録に「難解な計算課題(ProofofWork=POW)」が生成されるように仕組まれていて、これを最も早く解いた人だけがマイニングを行える。そして競争に勝利してマイニングに成功した人だけが、報酬として1ブロックにつき12・5BTC(2016年8月現在)を受け取ることができる。
競争の勝利者に報酬を与えながら認証を与えていくことで、取引情報は次々とブロックがつながるように記録され、不正なアクセスや改ざんにさらされることなく運用されていく、という仕組みなのだ。
こうして、ビットコインは2009年の運用開始以来、24時間365日、1秒たりとも停止することなく運用され続けている。
またビットコインは、発行額が2100万BTCと限界が設定されていることも重要なポイントと言える。
現在の発行速度は約10分間に12.5BTC。つまり10分間に一度の割合でマイニングが行われ、1ブロックが生成される。そしてその発行額は21万ブロックが生成される(およそ4年)ごとに半減していき、2140年には発行額2100万BTCに到達して発行が停止する予定となっている。
2016年7月10日に2度目の半減期を迎え、報酬は25BTCから12.5BTCに減少。現在約1580万BTC(7月末時点)発行されている状況だ。