サッカー日本代表が好成績→日経平均株価が上昇しやすい
サッカー日本代表のワールドカップの試合の視聴率は高く、国民的関心事である。
97年11月16日、日本のワールドカップ本戦初出場が決まったアジア第3代表決定戦(イラン戦)での勝利は、試合が行われたマレーシアの都市名にちなみ「ジョホールバルの歓喜」といわれている。
本試合は2-2の同点で「ゴールデンゴール方式」の延長戦に突入した。両チームとも決定的なチャンスを何度もものにできなかったが、延長後半13分、呂比須ワグナーが中盤で奪取したボールを中田英寿がドリブルで持ち上がり、ペナルティエリア直前からミドルシュート。イランの選手が弾いたルーズボールに、延長戦開始から投入された岡野雅行が走りこみ、スライディングしながら右足でゴールに押し込んだ。シーソーゲームの末のゴールデンゴールで、日本はワールドカップ本戦初出場を決めた。1954年のワールドカップ・スイス大会予選に参加して以来43年目、10回目の挑戦での悲願達成となった。
なお、ワールドカップの予選および本大会で「ゴールデンゴール方式」が採用されたのは、フランス大会(1998年)および日韓大会(2002年)の地区予選・本大会のみで、2004年からは延長を前半後半に実施する方式に戻った。ワールドカップ進出を決めた試合でゴールデンゴールを決めたのは岡野雅行だけだ。
ゴールを決めた時間は日本時間深夜17日に入っていた。しかし、テレビ視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は47.9%と、サッカー中継歴代14位の高視聴率。日本中が歓喜した瞬間であった。
翌11月17日朝、北海道拓殖銀行の都銀初の経営破綻の新聞報道があったにもかかわらず、その日の日経平均株価は1,200円80銭高で終わった。98年にかけて金融危機が深刻になり…という見通しはあまり感じられず、市場参加者のコメントには「膿が出て良かった」という楽観的なものもあった。深夜の歓喜の高揚感が株式市場にも反映された。
また、18年ワールドカップでコロンビアに2対1で勝った試合のテレビ視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は48.7%と歴代10位に相当し、翌日の日経平均株価は276円95銭高と3ケタ上昇になった(図表1)。
11月~12月にワールドカップ・カタール大会があり、サッカー熱が高まった2022年。テレビ中継があった日本代表の試合では、「2点差以上で勝利し、翌日に株式市場が開いた日」は6回あった。そのうち5回は、翌営業日に日経平均株価がほぼ3ケタ上昇(東アジアE-1選手権の1試合のみ99円73銭高と2ケタ上昇)している(図表2)。
ワールドカップ・カタール大会では、日本は1次リーグでドイツ、コスタリカ、スペインと対戦する「死の組」ことE組に入ったが、ドイツ、スペインという強豪チームを破り、ベスト16になった。しかし、クロアチアにPKで敗れ、史上初の8強は達成できなかった。
カタール大会でのドイツ戦とスペイン戦は、どちらも日本の逆転勝ちだった。ワールドカップ1大会で二度の「前半ビハインドからの後半逆転勝ち」は、1938年大会のブラジル、1970年大会のドイツ以来52年ぶり3チーム目である。最後まであきらめないという森保ジャパンの健闘が、コロナ禍という厳しい状況にある日本中に元気と勇気を与えてくれた。
サッカーワールドカップが「景況感」に与える影響
最後に、サッカーワールドカップが景況感にどう影響を与えたかを『景気ウォッチャー調査』でチェックしよう。
2018年では、サッカーワールドカップ・ロシア大会で日本代表が健闘しベスト16入りしたところまでが、6月『景気ウォッチャー調査』の調査期間だった。ベスト16での敗退(現地時間:7月2日)が調査期間外だった6月「サッカーワールドカップ」関連先行き判断DIは63.6、コメント数22人。6月29日のパラグアイ戦、PKでの敗退したことが調査期間中にわかってしまった2010年の南アフリカ大会、1次リーグ敗退となった2014年のブラジル大会よりも良い調査結果となった。
2022年カタール大会では、11月『景気ウォッチャー調査』の調査期間中はまだ1次リーグが2試合しか反映されず、スペイン戦を残し決勝トーナメント進出できるかがわからない状況だった。11月「サッカーワールドカップ」関連先行き判断DIは37.5、コメント数4人と芳しくない結果となった。「新型コロナウイルスの感染第8波や物価高騰の影響は受けると思うが、サッカーワールドカップでの日本の躍進、インバウンド消費の伸び等、季節要因も重なり、全体の消費動向は確実に上向く」(東京都・家電量販店 経営企画担当)というコメントがある一方、「景気は相変わらず低いレベルで安定する。サッカーワールドカップの開催中はさらに客が来ない。わかっていたことであるが、今回は特に客が来ない」(東海・一般レストラン 従業員)というコメントもあり、業種により影響は明暗が分かれていたことがわかる。
12月『景気ウォッチャー調査』では調査期間がワールドカップ決勝から間が空いたため、ワールドカップについてコメントした人は、現状判断・先行き判断ともにゼロだった(図表3)。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか
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