約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は「侍ジャパンの活躍」と「日経平均株価」の関係を見ていきましょう。

第5回WBCは、侍ジャパンが3大会ぶりに優勝

2021年に開催される予定だった第5回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、新型コロナウイルスの影響で2年延期され2023年3月に開催された。

 

第5回WBCでは、侍ジャパン(2012年の代表常設化後にチームの呼称として正式に使用されている)は第1ラウンドの4プールのうちプールBに組み分けされ、東京ドームで試合を行った。3月9日に中国を8対1、3月10日に韓国を13対4、3月11日にチェコを10対2、3月12日にオーストラリアを7対1で破り、4戦全勝で突破。テレビの平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は4戦すべて40%台前半と高い数字を記録した。

 

しかし、まだ第1ラウンドということもあって盛り上がりに欠けたためか、試合直後の日経平均株価は3月11日(金)▲479円18銭、3月13日(月)▲311円01銭と下落だった。

 

決勝トーナメントでは、準々決勝は東京ドームで、準決勝と決勝は米国フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで開催された。

 

準々決勝では、3月16日に侍ジャパンとプールA第2位のイタリアが対戦し、9対3で侍ジャパンが勝利。テレビの平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は48.0%と第1ラウンドの4試合より高まり、注目度が一段と増したことがわかる数字を記録した。侍ジャパンの勝利を受け、3月17日(金)の日経平均株価は+323円18銭上昇した。

 

準決勝は現地時間3月20日のメキシコ戦になった。日本とメキシコが当たるとすれば決勝のはずだったが、準々決勝直前になって、トーナメントのヤマが変わったのである。

 

当初、米国が準決勝に出場した場合は20日に試合が行われる予定で、日本と米国が勝ち進んだ場合は準決勝で対戦するはずだった。しかし、米国の準決勝は19日に前倒しとなってキューバと対戦。侍ジャパンは、日本時間21日午前中に行われたメキシコとの準決勝を6対5で勝ち抜いた。テレビの平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は午前中にもかかわらず42.5%だったが、3月21日の株式市場は休場だった。

 

現地時間3月21日に行われた決勝は劇的な幕切れとなった。侍ジャパンが3対2と米国をリードして迎えた9回2死、投手は9回あたまからマウンドに上がった大谷翔平投手。先頭打者を歩かせたものの結果的に走者なしで、三度のMVPを獲得している強打者マイク・トラウトを打席に迎えるという、まさにマンガのような状況。ホームランが出れば同点という場面で、大リーグでも屈指のスーパースター2人が相まみえたのである。

 

双方はエンゼルスのチームメートであったため、実戦では初の対戦であった。2個の空振りでのストライク、3個のボールのあとに大谷が投げた6球目はスウィーパーだった。トラウトのバットはボール下をくぐり、空振り三振で決着。侍ジャパンは3大会ぶりの優勝を果たした。テレビの平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は42.4%であった。決勝トーナメントでの侍ジャパンの活躍で、3月22日の日経平均株価は+520円94銭と大幅上昇した。

WBCで侍ジャパンが勝ち進むと、日経平均株価が上昇する

[図表1]WBC侍ジャパン決勝トーナメント直前から最後の試合直後の日経平均終値の変化幅(円)

 

侍ジャパン(日本)が優勝した第1回・第2回・第5回のWBCでは、優勝を決めた決勝戦当日の日経平均株価の終値は、決勝トーナメント(第5回)または第2ラウンド(第1回~第4回)直前の終値に比べ、第1回は+379円85銭、第2回は+919円02銭、第5回は+456円00銭上昇した。第1ラウンドを侍ジャパンが勝ち抜きWBCに対する世の中の関心が高まった期間で、日経平均株価が上昇している。

 

第3回・第4回のWBCでは、侍ジャパンは準決勝で敗退した。第2ラウンド直前の終値から準決勝「直後」の終値までで見ると、日経平均株価は各々▲62円99銭と下落、+23円72銭のわずかな上昇と、パッとしない結果になった。

 

しかし、侍ジャパンが勝ち進んでいた第2ラウンド直前の終値から準決勝「直前」の終値までは、日経平均株価は各々+277円33銭、+320円88銭とかなり上昇していた。テレビ中継が高視聴となる「侍ジャパンの試合での勝利」は、日本中を元気づけ、株価押し上げにも貢献する傾向があるようだ。

 

第6回WBC(2026年開催予定)での侍ジャパンの活躍が今から期待される。

第2回WBCでは、侍ジャパンの試合展開に沿った値動きに

日本が初優勝した2006年第1回の決勝戦は、春分の日に当たった。二度目の優勝を果たしたWBC決勝「日韓戦」が行われた2009年3月24日(現地は3月23日)は平日で、日経平均株価は後場の取引開始から午後1時45分ぐらいまでほとんど動かない時間帯があった。しかし、10回のイチローの2点タイムリーヒット後にそれまでのボックス圏を抜けだし、金メダルが授与された14時50分には8,504円41銭の高値をつけた。結局、3月24日の終値は前日比+272円77銭高になった。

 

同日は延長戦で、日本が優勢になると日経平均株価が一段高になった。この日の株価は、侍ジャパンの試合展開に沿った値動きだった。他に大きな材料がなく、市場参加者も、固唾をのんで試合のなりゆきを見つめていた。決勝の「日韓戦」のテレビ視聴率(関東地区)は平日にもかかわらず36.4%を記録し、当時としては空前の盛り上がりを見せた。

 

[図表2]2009年3月24日WBCの試合経過と日経平均

 

 

宅森 昭吉

景気探検家・エコノミスト

景気循環学会 副会長 ほか

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