第三次産業の台頭と課題
産業構造も大きく変わり、製造業の比重が低下し、第三次産業の比重が高まった。就業者で見れば、製造業が1990年には1,464万人で、全体の23.7%を占めたところから、2015年には908万人へと減少し、構成比も15.4%へと大きく低下した。第三次産業の就業者は1990年に3,642万人で、全体の59.0%とすでに大きな比重を占めていたが、2015年には4,007万人、構成比で見ると68.0%へと、さらにその比重を高めている。
このように、広義のサービス産業である第三次産業の比重が高まる変化は、サービス経済化と呼ばれる。一般に、サービス産業は製造業に比べて生産性が低く、持続的な経済成長を牽引する力が弱い(武田晴人『日本経済史』有斐閣、2019年)。対人サービス分野では、技術革新による労働生産性の上昇に限界があり、生産性上昇の努力は、雇用条件や賃金水準の切り下げに直結しやすいため、安定した雇用を創出する力も弱い。
高度経済成長期の機械工業化が、「投資が投資を呼ぶ」メカニズムをもって日本経済の成長を力強く牽引したことに比べれば、サービス経済化の展開に、持続的な高成長をもたらすメカニズムを見出すことは難しかった。
製造業の分野に即して見ても、グローバル化の進展に伴い、東南アジアや東アジアが急成長を遂げるなかで、工程間分業の国際化が進んだ。グローバル化が国内産業の空洞化をもたらすとともに、グローバルな低賃金競争の圧力が国内にも強く及んだ。
市場重視の改革がもたらしたもの
長期経済停滞のなかで、経済政策としては、市場メカニズムの重視による経済システムのトータルな見直しが進んだ(浜野潔ほか『日本経済史1600―2000 歴史に読む現代』慶應義塾大学出版会、2009年)。
1つの契機は1980年代からの日米貿易摩擦である。貿易摩擦が深刻化するなかで、アメリカは規制緩和による市場開放を強く要求した。これが財政赤字の解消を目的とする行財政改革と結びつき、やがて構造改革として取り組まれていく。
企業経営のレベルでもさまざまな改革が試みられ、株式持合の解消、メインバンク関係の弱体化、株主利益を重視する経営などが進められた。金融自由化やコーポレートガバナンスをめぐる制度整備も進んだ。雇用システムの見直しも進められ、非正規雇用が広がる一方で、正規雇用にも成果給・業績給の導入が図られた。
満薗勇
北海道大学大学院経済学研究院准教授
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