相続手続きは「10ヵ月以内」に終わらせなければならない…
家族が亡くなり、悲しい気持ちはわかるのですが、いつまでも泣いてはいられません。なぜなら、財産の持ち主の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続手続きをしなくてはならないからです。
■必要になる「4つの手続き」
まず相続手続きの全体像を説明します。大まかにいうと、次の4つです。
①相続人の確定
②遺産の分割
③相続税申告
④名義変更手続き
①相続人の確定…出生から死亡時までの戸籍を確認
まず、相続人を確定することが重要です。遺言書があれば、そこに名前を書かれている人が相続するわけですが、遺言書がなければ相続人を確定しなくてはなりません。
何よりも重要なものは、身分関係の書類をそろえることです。相続人を確定するために欠かすことができません。相続税の申告がいらないケースであっても、遺産分割を行うために必ず入手してください。
最初に被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と附票を入手します。これらを入手すれば、相続人が誰なのかを確定することができます。
入籍と転籍で古い戸籍にさかのぼっていきます。複数の市区町村役場に請求することになりますが、自身で取得する場合は、左記の手順を参照してください。また、この手続きは税理士に依頼すれば、取得代行ができます。
《故人の戸籍謄本取得の手順》
(1) 自身が法定相続人であることを示す戸籍謄本の取得※
(2)死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)を取る
(3)(2)で取得した戸籍謄本に出生からの情報がなければ、さかのぼって別の市区町村へ取りに行く(郵送可)
(4)2003年1月11日以前のものは改製原戸籍謄本・除籍謄本を取る
相続人全員の戸籍謄本と附票、住民票をそろえ、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらってください。「法定相続情報一覧図」があれば相続税申告以外の手続きで被相続人の戸籍謄本を提出しなくてすみます。この制度を利用することで相続の手続きを簡単にして、相続登記など遺産相続の手続きをスムーズに進めることができます。
また、相続が発生する前に「法定相続情報一覧図」は作成できません。身分関係の書類は、相続開始日10日以降のものでなければ使えないからです。
そして相続人全員の印鑑証明書を用意してください。「遺産分割協議書」には相続人全員の実印を押しますが、それに添付するためです。
※戸籍謄本は近年個人情報保護法の観点から、請求できる人が限られています。相続人であっても法定相続人だということを証明できる自身の戸籍謄本も必要になります。
②遺産の分割…まずは大まかな財産を把握
相続人が確定したら相続財産を把握してください。この時点では正確に金額を評価しなくても問題ありません。相続放棄と相続税申告の必要性を判断するだけですから、ひとまずは大まかな把握に努めてください。
相続の際にはプラスの財産だけではなくマイナスの財産として借金も相続することになります。借金が大きい場合は3ヵ月以内に相続放棄することも検討しなければなりません。
たとえば、借金がなく、自宅の相続税評価額が3000万円、銀行預金が2000万円、証券口座が1000万円、生命保険が500万円であれば、相続財産は合計して6500万円です。基礎控除の4800万円を超えていますので、相続税申告が必要になります。
③相続税申告…遺産分割協議書の準備
財産の大まかな把握ができれば、次は遺産分割協議です。相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その内容を書面にまとめます。
話し合いが決まり次第、遺産分割協議書を作成します。
④名義変更手続き…司法書士、行政書士に依頼
不動産や預金などの名義変更にも必要です。
預金については銀行で書類を受け取り、相続人全員が署名押印して提出します。相続人の銀行口座に分割して振り込まれ、預金口座は名義変更をする必要がありません。
証券口座については、相続人が新しい証券口座を開設して、そこに有価証券を移します。不動産の名義変更や相続登記は、司法書士に依頼してください。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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