(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍や地政学的リスク、高インフレといった複数のショックを乗り越え、現在ではコロナ禍前に匹敵する成長率を維持している世界経済。しかし、その成長の内訳を見ると、地域ごとに異なる動きが浮かび上がってくるようです。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、コロナ禍後の世界経済について詳しく解説します。

日本の立ち位置

以上、インド、中国、欧州(EU)、米国の状況について概観してきたが、本節では日本の立ち位置について簡単に確認しておきたい。

 

まず、日本のコロナ禍以降の特徴は、堅調な米国だけでなく、景気減速感が目立つ欧州と比較しても出遅れているという点である(前掲図表5)。例えば、生産指数を見ると、輸出競争力の低下が懸念されるユーロ圏以上に低水準にある(図表13)。

 

 

 

日本では、24年以降に自然災害や自動車業界の不正認証問題など供給制約が発生しており、こうした一時的な要因が成長の障害になっているが、基調的に見てもコロナ禍以降の回復力の弱さは目立っている。

 

日本のGDPを需要項目別に見ると、インバウンド収入を含むサービス輸出は大幅に伸びているものの、主要項目である民間消費の弱い状況が続いている(図表14)。

 

 

高インフレを受けて日本でも2023年以降の春闘では賃上げ率が急上昇し、名目賃金では上昇が続いているが、他地域と比較するとインフレ率に対して賃上げペースは緩慢で、実質所得の回復が遅れていることが内需の弱さにつながっている(図表15)。

 

 

2025年以降の注目点

前章では、コロナ禍以降の経済状況を各地域の比較も交えて確認してきた。

 

さて、今後、2025年以降の経済はどのようになるだろうか。多くの識者が指摘するように、今年大統領に返り咲いたトランプ氏の影響は欠かすことができない。1月20日の就任後、多くの大統領令に署名し、また経済政策についても様々な言及をしているが、今後、実際にどの政策が具体的に実行されるのかについては、不透明な部分も大きい。

 

IMFは1月17日に世界経済見通しの改訂版を公表したが、その「ベースラインシナリオ」では、公表時点の政策が前提とされ、トランプ政権後に実施・変更されると見られる政策は織り込まれていない。

 

この「ベースラインシナリオ」によれば、世界成長率は25年で3.3%とされ、現状並みの成長が期待されている(前掲図表1も参照)。地域別には、米国で高成長維持、中国で減速、欧州や日本の成長率がやや加速すると見込まれている*。

* 高山武士(2025)「IMF世界経済見通し-ベースラインは安定成長だが不確実性は高い」『経済・金融フラッシュ』2025-01-20(25年1月27日アクセス)。

 

そこで、本稿でもまずトランプ氏の政策を考慮しない「ベースラインシナリオ」に対して、前章での整理を踏まえて、筆者が特に注目する点をひとつ挙げておきたい。それは、今年も米国経済の強さが維持されるのか、である。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年1月28日に公開したレポートを転載したものです。

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