孫は可愛いけれど…「正直疲れた」
近所に暮らすことが、これほどの負担になるとは思っていなかった……。娘の絵里さんとその一家が、良枝さん夫婦の家の近くのマンションに引っ越してきてから約1年後。良枝さんは毎日が憂鬱になっていました。
もともと、上の孫は小学校に上がったら学童に預けるという話だったのですが、「優しいじいじとばあばの側にいるほうがいい」と学童には寄り付かず、学校が終わると直接良枝さんの家に帰ってくるようになりました。
結果として良枝さんが全面的に孫の面倒を見ることに。下の孫の保育園の送り迎えも担っています。一方の絵里さん夫婦は、良枝さんが見てくれる安心感からか、残業をすることがますます当たり前になっていました。
当初は「娘のため、孫のためになるなら」と前向きだった良枝さんでしたが、宿題をするように言ったり、送迎をしたり、食事を用意したりと、まるで母親業をもう一度やっているような感覚が、徐々に負担になっていきました。
夫の正さんも、最初は孫の顔を毎日見れることを喜んでいましたが、今では「絵里たちは今日も残業なのか」とイライラしている様子です。
もう1つ良枝さんを悩ませたのが、家計への負担です。毎日の食費、外食代、おもちゃや本にかかるお金、習い事への送迎のためのガソリン代など……。
夫婦の年金は月20万円弱。決して家計に余裕があるとはいえません。時折絵里さんが「ごめんね、色々負担かけちゃって」と言って気持ち程度のお金を渡してくることもありましたが、支出をカバーできるほどの金額ではありませんでした。
それでも、万が一自分や夫に何かあった時には、娘夫婦に面倒をかけるかもしれない。そう考えれば、この負担もしかたないのかもしれない。そんな風に考えて、何も言えずにいます。
「孫も娘もかわいいんだけど、でも、元の静かな暮らしが懐かしい。疲れた……」
良枝さんは悩み続けています。
「親子だから」と甘えすぎるとトラブルに発展することも
「孫疲れ」「孫ブルー」など、孫の面倒を見ることに悩むシニアは少なくありません。
内閣府による令和2年度「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によると、高齢者が望む子どもや孫とのつきあい方について、圧倒的に割合が多かったのは「子どもや孫とは、ときどき会って食事や会話をするのがよい:56.8%」でした。ここからは適度な距離感を求めている人が多いことが見て取れます。
親子ゆえに、たまった不満が爆発して絶縁に至るなど、取り返しのつかないことになるケースもあるといいます。そんな最悪な事態を招かないよう、親子とはいえ頼り過ぎない・頼られ過ぎないことが大切でしょう。
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