在職老齢年金によって受け取れなかった年金は「取り戻せない」
多くの方が誤った理解をしている「年金の勘違いポイント」について、本稿では、社長の年金最大のポイントである「在職老齢年金」について紹介します。
さまざまな社長から、ある質問をいただくことがあります。それは、「65歳から受け取れないのなら、退任まで繰り下げして、割り増しになった年金を受け取れないのか?」というものです。
残念ながらそれはできません……。
年金の繰り下げは年金受け取りの請求をした時点の月数で算定されますが、その算定において「年金を受け取る権利がない期間」は割り増しの対象とはならないのです。
在職老齢年金によって受け取れなかった年金を取り戻すことができないだけではなく、受け取れなかった期間の繰り下げによる年金の増額もできません。
「せっかく長年年金保険料を納めてきたのに、納得いかない……」と思われる社長は多いでしょう。実際、「話が違う!」「そんな話は聞いていない!」と怒ってしまう方も、少なくありません。
でも、わかりにくくても制度は制度なので、資産を増やすには知識で武装するしかありません。年金はそういった分野なのです。
基礎年金には“在職老齢年金の調整がかからない”
在職老齢年金という制度があることは知っていても、支給停止の範囲までしっかりと把握している社長は少数です。
多いのは、「役員報酬が高いと、国の年金は一切もらえない」と勘違いしているケースです。
公的年金は基礎年金、厚生年金の2階建てになっています。そして、在職老齢年金で支給停止がかかるのは、厚生年金(報酬比例部分)だけなのです(経過的加算は支給停止がかかりません)。つまり、基礎年金には調整がかからないため、もらえないと勘違いして受け取りの申請をしないままでいると、本来もらえるはずの基礎年金をもらうことができません。
もっとも、65歳を数年過ぎた段階で申請しても、申請までの期間に対応する年金を諦めなくて大丈夫です。遡ってもらうこともできますし、申請した時点までの月数で増額された年金を受け取り始めることもできるのです。
一方で、支給停止になった在職老齢年金を、あとからもらえることはありません。この点を勘違いしている人が非常に多いので、間違えないようにしましょう。
清野 宏之
税理士・行政書士、清野宏之税理士事務所所長
萩原 京二
社会保険労務士、働き方デザインの学校校長、一般社団法人パーソナル雇用普及協会代表理事
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