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社長の退職金は、単なる報酬の延長ではなく、経営者にとって重要な人生設計の一部です。特に「役員退職金」は、社長が生前に勇退する際や、万が一の死亡時に支給される一時金であり、老後の生活保障や遺族の支援を目的としています。本記事では、税理士・行政書士の清野宏之氏と社会保険労務士の萩原京二氏の共著『社長の資産を増やす本』(星野書房)から内容を抜粋・編集し、経営者自身の人生設計に欠かせない役員退職金の重要性や税務上のメリットについて詳しく解説します。

社長の退職金の基本「役員退職金」とは

本稿では、社長の退職金についてお話しします。

 

社長の退職金は、「役員退職金」と呼ばれ、社長が生前に勇退、もしくは死亡により退職する際に支払われるものです。生前の退任であれば社長本人の老後の生活保障、死亡による退職であれば遺族の生活保障や相続対策のために支払われる一時金です。

 

なお、死亡時に支給される一時金には、いわゆる「弔慰金」というものもあります。弔慰金は、故人の功労に報いる意味合いが強いものであり、それに対して死亡退職金は、勇退時に受け取る予定であった退職金見合いとなるもので、遺族の生活保障の意味合いが強いと考えられています。

 

また、私たちは経営者の方々が物心ともに豊かな人生を送ることを目的としているので、主に「生前に受け取る役員退職金」をメインに解説します。

 

同じ退職金であっても、会社の経営を行う経営者が受け取る役員退職金と従業員が受け取る従業員退職金とでは、性質が異なります。

 

従業員退職金は雇用契約に基づくものであり、退職金規程に定められていれば会社に支給義務があるため、従業員本人に受け取る権利があります。一方で役員退職金は、定款に定めていない場合は株主総会決議がない限り、役員退職金規程があったとしても取締役会で決議したとしても会社は支給できず、本人にも受け取る権利が生じません。

 

一般的に、役員退職金のほうが額は大きいため、恣意的な金額設定や単なる節税対策として使われることを防止する必要があるのでしょう。役員退職金は会社法による規制が適用されたり、会計や税務のルールに気をつけたりしなければならない点が、従業員退職金との大きな違いと言えます。

役員退職金の大きなメリット

役員退職金を支給することで、会社にとっても社長本人にとっても大きなメリットがあります。

 

【会社にとってのメリット】

 

・法人税法上、原則として損金算入が認められる

 

→法人税などの節税、自社株の評価減につながる

 

【社長本人にとってのメリット】

 

1.退職所得控除額が大きいため、役員報酬(給与所得)としてもらう場合に比べて、所得税等が少なくなる

 

〈退職所得控除〉

 

・勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数

 

・勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

2.役員勤続年数が5年超の場合、「退職金の額−退職所得控除額」×1/2が退職所得の金額となる

 

3.ほかの所得と分離して課税される

 

4.退職後に受け取った役員退職金は健康保険・厚生年金保険の報酬・賞与に該当しないため、社会保険料が不要であり、年金支給停止にも影響しない

 

5.勇退後の人生を豊かにできる

 

役員退職金は、とかく会社にとってのメリット、とくに節税の部分が強調されがちですが、じつは社長本人のメリットの最後、「勇退後の人生を豊かにできる」という点を、わたしたちは重要視しています。

 

世の中の多くの経営者は生涯現役を指向しているため、生前に退職金を受け取ろうという意識を持っている人は少ないように感じるのです。

 

もちろん一生経営者でいるのも素晴らしいことですが、社長亡きあとの会社の行く末を盤石なものとするためにも、社長の死亡による事業承継ではなく、生前の事業承継をおすすめしたいところです。

 

ご家族に「死亡退職金」として一時金が渡るのではなく、ご家族の長年のご苦労に報いるためにも、社長が元気なうちに退職金を受け取り、やり残しのない人生を歩むことを考えてみませんか?

 

 

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清野 宏之

税理士・行政書士、清野宏之税理士事務所所長

萩原 京二

社会保険労務士、働き方デザインの学校校長、一般社団法人パーソナル雇用普及協会代表理事

 

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