画像:PIXTA

「社長はいつ引退すべきか?」──この問いに明確な答えを持つ経営者は多くありません。事業を次世代に託すのか、それとも生涯現役を貫くのか。頭では合理的に考えていても、心は別の答えを求めていることもあります。本連載では、税理士・行政書士の清野宏之氏と社会保険労務士の萩原京二氏の共著『社長の資産を増やす本』(星野書房)から、内容を抜粋・編集してお届けします。今回は、ある社長が妻のひと言で進路を大きく変えた事例をもとに、経営者とその家族が最適な決断を下すための視点を探ります。

社長の考えがひっくり返った「妻の一言」

本稿で紹介するのは、「そもそも、亡くなるまで社長を続けたいか? それとも、誰かに引き継ぎたいか?」という、社長が自分の退任後の生き方をどう選ぶかに関する重要な話です。

 

あるお客様の事業承継に関する案件で、非常に興味深いことがありました。

 

このお客様は社長退任にともない、ご子息へ会社を継承し、生存退職金を数千万円受け取りたいとのことで、話を詰めていたのです。

 

ところが、この社長と奥様が一緒にわたしの事務所へお越しいただいたとき、奥様のひと言で話がひっくり返りました。

 

そのひと言とは……「あなたは70歳で完全退職するなんて、多分無理よ。だって、息子がやっていることに絶対口出しするし、うまくいかなかったらイライラする。給料をもらいながら一生会長職をやっていたほうが、あなたには合っているよ」といったものでした。

 

このご夫婦は、30年以上二人三脚で会社経営を行ってきたこともあり、奥様は社長のことを誰よりもわかっています。それだけに、このご意見にはすさまじいパンチ力がありました。

 

言われた社長は、もともと数千万円を生前に受け取る気でいたのですが、苦笑いしながら「そうだよなあ」と言っていました。

 

これは一見微笑ましいのですが、わたしなりに大きな気づきが2つあったのです。

「退職金を生前に受け取るか」「生涯現役を貫くか」で、退職プランも変わる

気づきのひとつ目は、「生前に退職金をもらわなければいけないわけではない」ということです。これまでわたしは、生前退職金と死亡退職金をほとんど区別していなかったのですが、社長には仕事を好きな人が多いので、一生社長のままでいることがご本人やご家族にとってしあわせならば、それも選択肢になるはずです。

 

2つ目は、退職金の額です。ひとつの考え方ですが、たとえば生前にもらう退職金が1億円だったとしても、それなりの年齢になってから死亡退職金として奥様に残すのであれば、2000〜3000万円でもいいのではないか、ということです。

 

死亡退職金の額は、生前退職金と同じ1億円ではなくてもいいのかもしれません。もちろん、社長が亡くなったあとに受け取るお金は多いに越したことはありませんが、少なくとも2000〜3000万円の退職金額なら、税務署から「過大だ」と言われることは、ほとんど考えられません。

 

もし奥様が異論を挟まないのであれば、問題はないはずです。いつまで現役でがんばるかは、社長ご本人の生き方の問題です。人によっては、このような選択肢があってもいいとは思いませんか?

 

余談ですが、おそらくその社長とわたしの2人だけで話をしていたら、生前退職金の話だけになって、社長やご家族が心の底で望んでいることはわからなかったかもしれません。ご夫婦揃ってお話ししたことが、きっとよかったのでしょう。

 

事業承継にも関わることではありますが、中小企業は家族経営を行っていることが多いので、退職金も含めた事業承継については、夫婦お2人や後継者となるお子様を交えた話し合いを行うことが、非常に有効と言えます。

 

 

〈社長必見〉専門家が10万人に伝えてきた正しい資産の築き方!税理士・社労士が解説─詳しくはコチラ>>>

清野 宏之

税理士・行政書士、清野宏之税理士事務所所長

萩原 京二

社会保険労務士、働き方デザインの学校校長、一般社団法人パーソナル雇用普及協会代表理事

 

注目のセミナー情報

【海外不動産】6月28日(土)開催
大和ハウス工業事業参画!英国ロンドン分譲マンション
ロンドン中心部まで約2km圏内《Zone1》
「THE WILDERLY LONDON(ザ ワイルダリー ロンドン)」の全貌

 

​​【国内不動産】7月5日(土)開催
金価格が上昇を続ける今がチャンス!
「地金型コイン」で始める至極のゴールド投資

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

社長の資産を増やす本

社長の資産を増やす本

清野宏之(著)、萩原京二(著)

星野書房

目の前の経営に追われすぎて、社長自身の資産づくりを後回しにしていませんか? 本書で、入るお金が「億単位」で変わってきます。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧