画像:PIXTA

60歳以上で老齢厚生年金を受給しながら働き、一定以上の賃金を得ている人を対象とする「在職老齢年金」という制度があります。この制度では、65歳以上の人の収入が一定額を超えると、年金が減額されたり、最悪の場合、全額支給停止となることがあります。経営者が年金を受け取りながら経営を続けるには、適切な工夫が必要です。本記事では、税理士・行政書士の清野宏之氏と社会保険労務士の萩原京二氏の共著『社長の資産を増やす本』(星野書房)から一部抜粋、編集し、社長が老齢厚生年金を最大限に活用する方法を解説します。

社長も老齢厚生年金を“もらうに越したことはない”

社長の資産を増やすうえで、厚生年金を素通りするわけにはいきません。

 

在職老齢年金のハードルをクリアして、厚生年金を一部、もしくは全額もらうに越したことはないでしょう。

 

社長が厚生年金を受け取るメリットには、次のことが考えられます。

 

①社長の手取り額が増え、資産の増加につながる

 

これは、あえて説明する必要はないでしょう。

 

②社長の年金額が増えた分、役員報酬を下げられる

 

社長の手取りを変えなくてもいいのであれば、年金額が増えた分、役員報酬を減らすことができます。

 

会社としてコスト削減した部分を内部留保にしてもいいですし、社長の勇退退職金の原資にまわすこともできるはずです。

 

③「加給年金」がもらえる可能性がある

 

老齢厚生年金には、家族手当とも呼ばれる「加給年金」というものがあります。

 

厚生年金に20年以上加入した人のパートナーが65歳になるまで、年で約40万円受け取ることができるものなのですが、支給条件のひとつに「在職老齢年金によって老齢厚生年金が全額支給停止になっていないこと」とあります。

 

老齢厚生年金を一部でももらえるようにすることで、年40万円年金額が増えるのは、それなりのメリットととらえていいのではないでしょうか。

 

図1
図1

 

社長の在任中に老齢厚生年金をもらえるかどうかは“ケースバイケース”

65歳以降の老齢厚生年金のもらい方は、添付の図2の通り、3パターンに分かれます。

 

つまり、

 

・パターン1…老齢厚生年金が全額支給停止

 

・パターン2…老齢厚生年金が全額支給

 

・パターン3…老齢厚生年金が一部支給

 

ということです。

 

もっとも望ましいのがパターン2であり、最低でもパターン3でいきたいところです。社長によって状況が異なるので、どの程度まで持っていけるかはケースバイケースと言えます。

 

もっとも大切なのは、あなた自身がどうしたいかに尽きます。「社長を務めている間は、厚生年金をもらわなくてもいい」という考えならば、とくに対策を打つ必要はないでしょう。

 

一方で、「せっかく保険料を払ってきたのに、一生厚生年金をもらえない可能性があるのは嫌だ」と考えるのであれば、厚生年金をもらえるよう対策を打っていく必要があります。

 

まずは、年金のポイント、注意しなければならない点をしっかりと把握し、「どうしたいか」を明確にしましょう。知っておくこと、どうしたいのかを決めることで、事前に対策することができます。

 

社長であるあなたの資産を増やすためにも、最善策をとっていきたいですね。

 

図2
図2

 

 

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清野 宏之

税理士・行政書士、清野宏之税理士事務所所長

萩原 京二

社会保険労務士、働き方デザインの学校校長、一般社団法人パーソナル雇用普及協会代表理事

 

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