人生の晩年から逆算した老後資金の守り方
老後生活設計の視点からみれば、定年退職後は資産の取り崩し時期に入ります。定期的な労働収入のなくなった退職後に、新たな投資ができる人は少ないです。本来、投資による利益は長期で生み出されるものであり、年金でゆとりある生活を実現できているという人は少なく、長期で投資資金を確保することが非常に難しいためです。
退職後はAさんのように、日ごろの生活費を年金で賄えたとしても、入院費や介護施設費、レジャー費用までを年金で賄えているという人は少ないのが現状です。そうすると、退職時にまとまった老後資金があったとしても、それらの資金の多くは生活のなかで取り崩す必要のあるお金となります。
もし投資資金の区分を超えてこの先の生活に必要な資金を投資に充ててしまうと、長期投資には耐えられません。利益が出るタイミングよりも先にお金が入り用になり、もし現金化を先送りできたとしても綱渡り状態となります。大きな損失がでれば、その後の暮らし向きが大きく変わってしまう可能性もあります。人生の晩年、お金が足りないために尊厳を損なう状況に陥ってしまえば、悔やんでも悔やみきれないことと思います。儲け話にはより冷静な判断が必要となるでしょう。
「投資に充てられる資金を自身で把握しましょう」というと、そんな難しいことはできない、と思う人もいるでしょう。家庭の投資資金の把握にあたっては、晩年の暮らしから逆算して計算する必要があるため、確かに容易ではありません。ファイナンシャルプランナーなど、暮らしのお金の専門家に相談できるのが理想ですが、そうした機会を持てない人も多いでしょう。
そういった場合であれば、新たな投資は避け、まずは資産の目減りを避けることに集中したほうがわかりやすいです。資金の目減りを避けるために、当たり前のようですが、働けるうちは可能な範囲で働き、年金収入にあわせた生活を心掛けましょう。また、詐欺を「避ける」ことに注力するのもいいと思います。
情報収集を心がけ、詐欺の手口を知り、「甘い話」を冷静に見極める目を少しずつ養っていきましょう。家族や友人とのコミュニケーションを増やすことも孤独感を減らし、詐欺被害を避けることにつながります。筆者もファイナンシャルプランナーとして、多くの方が老後資金を守りながら安心した生活を送れるために、ちょっとした知恵などを発信していきたいと思います。
〈参考〉
※1 警察庁「SNS型投資・SNS型ロマンス詐欺の被害発生状況(R5.1~R6.11)」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/assets/img/new-topics/sns-romance/new-topics_data.pdf
※2 警察庁「特殊詐欺対策ページ」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/
※3 岩手県警察「ネットショップ経営名目のロマンス詐欺被害の発生(R6.12.24)」
https://www.pref.iwate.jp/kenkei/anzen/sagi/3002261/3002276.html
※4 伊勢市「ネットショップ出店詐欺に注意!」
https://www.city.ise.mie.jp/kurashi/soudan/syouhiseikatsu/1015222/1017020.html
※5 消費者庁「特殊詐欺等の消費者被害における心理・行動特性」より
https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_007/assets/future_caa_cms201_230621_02.pdf
※6 NHK 山口NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20240422/4060019943.html
内田 英子
FPオフィスツクル代表
ファイナンシャルプランナー
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