生えている髪の15%は「退行期」にある状態
そもそも毛髪はそれぞれ別々のサイクルで生え、育ち、成長しています。これは毛周期(ヘアサイクル)といわれるものです。そのメカニズムは連載後半で詳しくお話しすることにしますが、髪の毛はそれぞれのサイクルで生えて伸び、やがて伸びるのを休止して退行期に入り、最後に脱毛します。これが自然のヘアサイクルなのです。
今、頭に生えている毛髪のうち、約15%は退行期にあるとされます。すなわち全体の1万5000本は今や抜けようとしている状態。それが1日に50~100本ずつ脱毛していくのは当たり前のことなのです。もし、それをかなり上回る量の抜け毛が続くようなら何らかの異常かもしれませんが、100本程度の脱毛を「薄毛か⁉」と心配する必要はありません。
それよりも、たとえば「排水溝の抜け毛=薄毛のサイン」と自動的に思い込んでしまうことのほうが怖いのです。
そこで、もし排水溝の抜け毛が気になったら、別のことをチェックしてみてください。それは髪の量ではなく、抜けた髪の状態です。
排水溝にたまっている髪の毛が、普通の太くしっかりした毛ならば、心配はいりません。しかし、それが細く、弱々しい感じのものであったら要注意です。それは男性型脱毛症(AGA)による脱毛かもしれません。
AGAについても連載の後半で詳しく解説しますが、AGAになると、ヘアサイクルに異常が生じ、髪の成長が非常に短いものとなります。これを毛髪のミニチュア化といいます。
そこで、細く弱々しい毛が抜けているのを見つけたら、このAGAを疑うべきです。
「頭皮環境」と「薄毛」に直接の関係はない!?
一方、“頭皮環境”という言葉も要注意です。これも宣伝文句でよく使われるもので、あいまいながらも説得力や納得感を招きがちな言葉です。そのため「頭皮環境が良くないせいで薄毛になる」と信じ込まされることが多いようです。
確かに頭皮の毛穴は清潔にしておくに越したことはありません。しかし、だからといって不潔にしていると必ず薄毛になるとも言いきれません。たとえばチベット人は髪の毛を洗わないといわれますが、薄毛の人ばかりではないのです。つまり、頭皮環境と薄毛は直接の関係がなく、いくらシャンプーして洗ったり、揉んだりしても薄毛を予防できるとは限らないのです。