“社員旅行”の数ヵ月後…税務署から来た「1本の電話」
正月休みも明けてすっかり通常業務に戻ったころ、B社に税務署から連絡が。「税務調査に伺いたい」とのこと。
税務調査にネガティブなイメージを持つAさんは、これに反発。
「大して利益も出ていない会社に、どうして税務調査なんか来るんだ。他にもっと儲かっているところがあるだろう! そっちに行ったらどうなんだ!」
しかし、「いえいえ、御社のような売上の大きい法人には、定期的に税務調査に伺っておりまして……。そこをなんとか、お願いします」と低姿勢で懇願する職員に、最終的にはAさんが折れます。
「こっちも忙しいんだから、さっさと済ませてくれよ!」
税務調査の結果…B社に課された「追徴税500万円」
数日後、2名の調査官がB社にやってきました。社長の経歴や会社の概要について、世間話を交えながら、だんだんと質問内容が核心に近づいていきます。
調査官「お正月の社員旅行というのは、親族だけで行かれたのですか?」
Aさん「あぁ、そうだよ。だけど、わが社の大切な社員だからな。それに、正月休みに他の従業員を無理に参加させるのは良くないだろう?」
調査官「なるほど、そうでしたか。では、他の従業員の給与水準と比べて、専務の息子さん、経理部長の奥様、総務部長の娘さんに支払っている給与額が驚くほど高いのですが、これはどうしてでしょう? それぞれの業務内容について教えていただけますか?」
Aさん「給与額は、働きぶりを見て私が決めている。うちの家族はみんな優秀でよく働いてくれるからな! なんだよ、なんか問題でもあんのか?」
調査官「先ほど、御社の従業員の方にご家族の業務内容を確認したところ、最近ではみなさんあまり会社でお見かけしないようですね。普段どんな仕事をされているのかもよくわからないそうで……」
Aさん「は、はぁ!? 誰だそんなデタラメを言っているやつは! ここに連れてこい!」
調査官「それはできかねます。ともかく、ご家族に対する給与のうち明らかに高額な部分は経費として認められませんので、修正申告をお願いします。また、Aさんがおっしゃる“社員旅行”についてですが、身内以外の従業員の方がどなたも参加されていないようであれば、それは社員旅行としては認められませんので、こちらも修正が必要です」
結局、法人税と所得税、消費税に加算税と延滞税を加えて、合計約500万円の追徴税を課されることとなったAさん。調査官の指摘に対する怒りが収まりません。
「ふざけるな! 赤字企業のうちにそんな金はない! この会社を潰す気か!? この地域でうちが潰れたら、どうなるかわかってんだろうな!」
と、Aさんは悲鳴とも恫喝ともとれる反論をします。しかし、調査官に「赤字企業といっても、経費を過大計上してあえて赤字にしているのではないですか? 適正な申告と納税をお願いします」と冷静に返されてしまいました。
