葬儀会社での事例……震災後の心のケアとしての「位牌」
事例として、葬儀会社を経営する社長から聞いたエピソードを紹介したいと思います。
大震災が起きると、ご遺体が見つからない犠牲者が出ます。ご遺族の中には、ご遺体と対面できないために、気持ちに区切りをつけることができず、ずっと苦しむ人がいると言います。
同社では、東日本大震災の際、そんな方々のために「せめて位牌だけでも」と無償で提供したところ、多くの人が別れを受け入れることができたと言います。「位牌を受け取る」という行為が、これまでの日常を終わらせる「終焉のセレモニー」の役割を果たしたということです。
セレモニーは立派なものである必要はありませんが、インパクトが必要です。「遠山の金さん」は、物語の終わりに「これにて一件落着」と言いますが、あのフレーズを聞くと事件が終わったことがマインドセットされ、翌週の視聴に意識を切り替えることができます。
企業では、新しい経営計画書を作る際に、「お疲れ様でした!」の掛け声とともに、以前の計画書を破り捨てるといったアイデアがあります。
企業で「終焉→中立圏→開始」をスムーズに行うためには、スケジュールに工夫が要ります。
経営者は次期の計画を立てる段階でセレモニーが必要で、社員はその計画を実行する直前にセレモニーが必要という、タイムラグがあるからです。
例えば、新年度が始まる前までの期間に、経営者がまず「終焉→中立圏→終焉のセレモニー」のプロセスを踏み、心機一転して次期の経営計画を立案します。そして、年度終わりに打ち上げを行い、そこでインパクトあるセレモニーを行い、社員のマインドセットを行うというスケジュールが考えられます。
個人が新年の目標を立てる場合は、12月に入ったら終焉→中立圏のプロセスに入り、大晦日にセレモニーを行い、新年に計を立てると良いでしょう。
2.計画は細かく作りすぎない
最近、「PdCa」という言葉を知りました。「PDCA」が原型ですが、PとCは大文字、dとaは小文字で書かれています。
要するに、Pan(計画)とCheck(チェック)はしっかりやるが、Do(行動)とAct(改善・対応)は弱いという、考えてばかりで行動しない、頭でっかちな日本企業の問題点を指摘した造語です。
計画を細かく作りすぎると、かえって足かせになることがあります。
特に現代は、外部環境の変化が激しいので、計画通りに事が進むことは稀です。このような状況下で綿密な計画に依存すると、計画の修正に時間と労力を奪われ、気づけば「年がら年中計画ばかり立てていた」ということになってしまいます。
スタンフォード大学教授のキャスリーン・アイゼンハート氏は、世界中のコンピューターメーカーを調査し、最もイノベーティブな成果を上げた組織の特徴として、計画段階にかける時間が少なく、実施段階における時間が多いことを明らかにしました。
計画は、まずは大まかなものを立て、できるだけ早く実行に移すことが大切です。行動の結果を振り返り改善する「やっては直す」の繰り返しで計画の精度が高まっていくのです。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>